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通奏低音合わせ 02 ― 成長? ―

さすがにリハ会場にたどり着くまでの話だけというわけにも行かないので、通奏低音合わせの中身についても少し書いておこう。


   


第1楽章の最初こそ心の準備不足でヴィオラをバイオリンモードのまま弾いてしまったが、しばらくすると慣れてきて周りを見渡せるようになって来た。まだ完全にヴィオラモードに移行できてはいないので、脳の処理能力の多くを読譜と指への直接指示に費やしているが、始めたての頃のように「イキナリだと全く弾けない」という状況にはなっていない。

元々はモード移行には丸一日以上必要だった事を思うと、十数分~三十分程度で大体安定する位にまで持ってこれている今、多少は成長したと言えるだろう。それでも、今回の本番を想定すると切替が間に合うかいうと恐らく少し厳しいだろうが・・・。

その少しだけ残っている脳の処理能力で、周りを聴いたり見渡したり指揮を見たりする事が可能になっていることに気づいた。これまでの練習では自分のパートで精一杯だったのに、突然そういうことが出来る余地が生まれている。これは低音パートが入ることで全体が安定して弾きやすくなったということなのだろうか。

低音パートが入ることによって音の厚みが圧倒的に増している。今までは、基本的にヴィオラが一番低いあたりの音を鳴らしていたという状況だったのだが、自分の左側からとてつもなく安定したリズムパートが聞こえて来る。

この音の中にいるのが楽しい。


― なんか、締まった感じやなー


そして、心なしか感じる「戻ってきた感」。

同系列の楽器による4部構成。
この音の場、雰囲気に非常に似た空間に覚えがある。
そう、混声4部合唱に世界観が似ているのだ。

左からにベースライン、右からメロディーとその対が聞こえて来る構図。
ヴィオラは合唱では長く居る「テノール」と音の立ち位置が似ている。


― やべぇ・・・ちょっと楽しいなこれ


第1楽章を通した後、先生の要求はまずリュートとビオラダガンバに向かう。
通奏低音は今日が初合わせなので、必要な事項を伝えていくのと同時に、この集団に向けてバランス調整をしている感じ。


先生 「ガンバもうちょっと出ますか?」


ガンバ 「ぁ、弾いていいの?」


― ぇ・・・おさえてアレっすか?


ガンバは私の真横なので、それこそ「ドーン」という感じでお腹から響いていたのだが、プロにとっては「手加減した」状態でそれらしい。


先生 「あとリュートのここはもっとこう○○な感じで」


リュート 「ぁ、はいはい。同じパターンは全部それでいいかな?」


先生 「ガンバのここは○○な感じで」


ガンバ 「あぁ、そこはそっちね」


そんな感じで、どこそこはコードが何から何に変わるところだからどうとか、これは切れ目がそっちじゃなくてこっちとか、ものすごく細かいレベルで調整が進んでいく。周りの我々にはやり取りがハイコンテクスト過ぎて全然分からない。
表面的なことは分からなくもないのだが、プロのバロッカー同士、しかも普段から演奏を共にしている奏者同士の間で成立している「ここはコレ」感。「ここはコレ」の中に一体どれほどの高密度な情報のやり取りがあるのか想像もつかない。


   


その後も滞り無く合わせは進んでいく。
これまでの練習でやってきたことの確認。
最後の調整。


― なんか・・・思ってたよりずっと弾けてる気がするなぁ・・・


今までも坂本門下でアンサンブルに何度か出ているが、今回が一番「ちゃんと仕上がってきている」感がある気がする。通奏低音にプロ、そしてコンミスにウン十年選手という配置に引っ張ってもらっている事は確かだが、大半がバイオリン歴3年前後という素人集団でもなんとなく形にできるものなのだと思うと感慨深いのだ。

結局、破滅的にヤバい場所等もなく、バッハ組の最終練習、通奏低音合わせは予定時間を10分程余らせてお開きとなった。


― さぁ。バイオリン脳に切り替えんとな・・・


この後ソロの通奏低音合わせが待っている。
ヴィオラ脳になりきったところからの切替。


バイオリンソロの通奏低音合わせは約2時間半後。
その間、音を鳴らせる場所はない。

移動と食事の間に、どうにかしてバイオリンモードに移行しておかなければならない。


私 「あぁ・・・今からバイオリンに切り替えやな・・・」


先生 「ククク・・・良いですねぇ その感じ」


私が楽器持ちかえに伴って混乱している様を先生はとても喜ぶ。


確かに明日の本番を思えば、「この感じ」を沢山経験しておくことは大切だ。
今日は2時間半のインターバルでヴィオラからバイオリンへの持ち替えが一回あるだけだが、本番当日はもっと短周期で楽器の持ちかえが何回も発生する。

本番当日もリハがあるため、バイオリン→ヴィオラ→バイオリン→ヴィオラと、少なくとも3回は持ち替えが発生する。しかも、最後のバイオリン→ヴィオラの間はおそらく30分~40分程度しかインターバルがない。

今日、つつがなく持ち替えが成功することで苦手意識を排除しておくことは非常に大切なのである。
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発表会デビュー -本番-

今回は合奏レッスンの発表会、本番当日の話である。


指定された集合時間に集合場所に行くと、2人くらいしかいないという、緊張感ゼロのムードでスタートした一日。
さらに、本番直前まで皆でたい焼きを買いに行ったりするほどのリラックスムード。


しかし、さすがに本当に出番直前になってくると、皆緊張した面持ちになってくる。


「うわー緊張してきたー」


と言い出す人もいたが、私はそうでもなかった。
いや、全く緊張しなかった。


私は本来「緊張しぃ」である。
だが、今回はそもそも立ち位置が「ゴマメ」なので、緊張する必要がない。私のパフォーマンスは全体の出来不出来にあまり寄与しないのだ。そして、なにより集団で舞台に上るという行為に慣れきってしまっている。これがコンマスやソロを担当する事になっているのなら「可哀想なくらい」緊張するのだろう。


アナウンスから合奏の出番が告げられ、舞台袖に上がる我々。
緊張を助長させるかのように、合奏に参加するメンバーひとりひとりの名前が読み上げられる。
こういう「個人」を炙り出す行為は非常に"効く"。緊張を掻き立てられるのだ。集団の中に潜んでいたところに突然スポットライトを当てられたような気分になる。
本番には適度な緊張感が必要だし、そもそも我々は修行中の身なのだから「緊張の中で弾かせる」という主催者側の意図があると考えると、なかなかに天晴な配慮である。

しかし、少々攻撃力が高すぎたようだ。


「うわー・・・どうしよーメッチャ緊張してきた」


名前が呼ばれた一人がそうつぶやく。こういう場で「緊張してきた」と誰かが言い出すと緊張が伝播することがある。合奏に初参加しているペーペーが気にすることでは無いのだろうが、合唱で舞台に立つときの習慣で本番の舞台に立つときにはできるだけ「楽しい空気」にしておきたいのだ。
なんとか、和やかな雰囲気にできないものか・・・と思っていると、私の名前が読み間違えられるというラッキーなハプニングがあり、ここぞとばかりにツッコミを入れる。ちょっとだけ笑いが起こって間接的に皆の緊張を少しだけほぐすことに貢献できた・・・かもしれない・・・と勝手に思っておこう。


   


本番は始まってみればあっという間である。

ガボットとジーグはテンポが早く、動きも忙しいので周りを聞いているゆとりはなかったが、アリアだけは周りを聴きながら弾くことができた。


― やっぱり皆で合わせるのはえぇなぁ・・・


うっかりそう思ってしまった。


そして、もうひとつ、私は合唱の方で本番の舞台の途中で必ず思うことがある。


― あぁ・・・これで終わってしまうの寂しいなぁ・・・


それを今回も思ってしまった。

合唱ではほとんどアマチュアの本番の舞台は一回こっきりである。再演はないし、いわゆる「レパートリー」というものを持たない。数ヶ月か1年か数年か・・・舞台に登るまでの期間は団によってことなるが、演奏会を境に次の演奏会に向けて別の曲の練習が始まる。「本番」はすなわち、その曲との「別れ」でもある。
学生のときは「卒業」というシステムがあるのでもちろんだが、前説で述べたように合唱団は様々な事情をかかえているため、仮にもう一度同じ曲が選曲されることがあったとしても、ほとんどの場合で全く同じメンバーという訳には行かない。

この曲でこのメンバーでの本番はこれで終わり。そしてこの曲とは当分の間お別れ。
でも、一回っきりだからこそ生まれる「何か」。そこにある「アマチュアだからこそ」の「何か」。


そう思ってしまったということは、少なくとも私の本心は「もう一度やりたい」と思っているということになる。
恐れていた通りになりつつあるというわけだ。


   


さて、本番の音源を晒しておこう。
といっても、ネット上には既に公開されているので、そこへのリンクを標すだけである。

本番演奏の音源はrauloopさんのブログにアップされているので、興味がある方は聴いてみていただきたい。音楽鑑賞用としては聴けたものではないとは思うが、経験年数が2年前後がほとんどの素人集団としては結構マシな演奏なのではないかと思う。

もちろん、それは低音部を先生がビオラで固めているのと、主メロディ部を弾いているコンミスが7年目のベテランで安定しているという事がとても大きい。そして、普段あれほど「音でかい」と言っているくせに、本番の音源では2ndバイオリンである私の音は殆ど聞こえない。「邪魔をしない」を実践した・・・と言い訳しておこう。


   


そんなわけで、バイオリン歴10ヶ月目にしてついに、発表会デビューを果たしたのであった。

そして、合奏に参加してみた私の感想であるが、もう次の合奏レッスンにエントリーしてしまっているという事実が全てを物語っていると言えるだろう。

発表会デビュー -原点回帰-

そんなわけで、前回に引き続き、合奏の話である。


もちろん発表会にいきなり出るわけではなく、主目的は合奏レッスンで「合わせ」を学ぶことにあり、その成果を発表会で披露するわけである。レッスンというからには当然課題曲が与えられる。


バッハの管弦楽組曲第3番より、ガヴォット、エア、ジーグ


初めて参加する合奏であろうことか、バッハ。
ご存知、音楽の父、バッハである。

この中の"エア"は別名を"G線上のアリア"という有名な曲である。


私は先生から送られてきた楽譜を見た瞬間に思った。


― 参加する方を間違えた



説明しよう。
実は、合奏への参加を促された際に、選択肢があったのである。


一方は私が参加することにしたバッハを課題曲とするグループ。

もう一方は葉加瀬太郎の曲をはじめとした比較的ポピュラーな曲を課題曲とするグループ。



私は、先生に「バッハと葉加瀬太郎どちらにしますか?」と問われて反射的に「バッハ」と応えてしまったのである。


ちなみに、「合奏に参加しますか?」ではなく、いきなり「どちらにしますか?」である。言うまでもないが、問われた時点で私は合奏への参加表明などしていなかった。こういう「YESかNOか?」ではなく、「AかBか?」から選ばせて必然的に「YESにしてしまう」という手法は、営業マンがクロージングでお客を「落とす」時に使うテクニックの一つである。人間、「どちらかを選べ」と言われると、どちらかから選ばなければならないというような心理が働いて、「そもそもどちらもNO」という選択肢が落ちてしまう傾向にある。特に日本人はその傾向が強いらしいが、見事、その罠にはまったというわけである。営業テクニックを使ってくるとはまったく我が師の恐ろしいこと・・・。


さて、後から気づいたのだが、「どちらでも好きな方に参加してOK」と言いながら、選曲やメンバーを見ると実質的に「レベルに応じて」グループが分かれていることに後から気づいた。


話を分かりやすくするために、バッハの方を「本気グループ」、他方を「和気あいあいグループ」と名付けよう。


どう考えても私が参加するべきは「和気あいあいグループ」の方だった。
私は「和気あいあいグループ」だったとしても、メンバーの中で経験は浅い方である。まして「本気グループ」ではブッチギリで経験が浅い。経験が1年に満たないのは私くらいなもので、皆2年前後、少なくとも3rdポジションまで進行している。一番長い人は7年。


「和気あいあいグループ」の楽譜を見せてもらったが、『1日2日練習すればとりあえずは弾けそう』という感じの楽譜である。個人レッスンで使っている楽譜と比べてレベル的な乖離がない。
それに対して「本気グループ」の方はまず音を並べるだけでも無理な状態。特にジーグが無理すぎる。個人レッスンの課題曲よりも何段もレベルが上の世界観である。


   


そんなわけで、合奏レッスン中は終始「弾くことに精一杯」という状況だった。


さっぱり音楽についていけない


これは、全く新しい感覚だった。



私は合唱経験はそこそこあるが、「歌うことで精一杯」という状況はあまり経験していない。サボって練習をしていなくて全然歌えないとか、音域的にしんどい・・・とかそういう事はもちろんあるのだが、「レベル的にまったく歌うことができなくてついて行けない」という状態は、最初からなかった。

自分で言うのもなんだが、私は小さい時から歌は得意な方で、よほど複雑なパッセージでもなければ数回聞けばそれで歌えるようになる。「動きを理解する」=「歌うことができる」なのである。聴いた音と頭の中でイメージした音と声帯がかなり連動しており、聴いた音をそのままアウトプット出来る。よって、無練習で合唱団の練習に行き、初見でアンサンブルに参加したとしても、初見で適当に歌いながら同じパートの人から音を拾って補正をしながら無練習がバレないように歌う・・・というような事が成立する。なので、何回キーボードでパッセージを弾いてやっても音が取れない人の事を、私は長い間理解できなかった。

なお、語弊が無い様に行っておくが、ここで言う「音のイメージと声が連動している」というのはあくまで「音取り」の話であって、音色や歌い方については別の話である。頭の中の音楽のイメージ通り完璧に歌えます・・・という意味ではないので悪しからず。あくまで、「すぐ音は並べられるよ」というレベル感での話である。



さて、バイオリンでは歌にあるような「イメージとの連動」が無い。
脳と左手・右手との間にバリアがある。頭の中で音が鳴っていてもまったくそれを再現できない。


― なるほど・・・こういう感覚なのか


音楽に置いて行かれる感覚。
合唱ではパートの核になったりする事も多い私にとって、久しく感じることがなかった「乗っけてもらう」感覚。

私はこの「本気グループ」の中では、音楽的には一切期待される存在ではない。
せいぜい、時々ちょっとだけ音量アップするという程度の関わり具合であるのだ。



弾けない事が楽しい



こういう言い方をすると不思議だろうか。

合唱では「自分がここで落ちたらもうパートとして復活不能」とか、パート内の音量や全体での声量バランスを考えながら歌う。皆が歌いやすくて気持ちよく「爆発」できる所は逆に声量を落として音量を調整しながら、同時に喉を休ませたりする。自分が歌えるのは「あたりまえ」で全体での音楽性に配慮したパフォーマンスを期待される。それはとても楽しく嬉しいことだが、時として「純粋に音楽を楽しむ」という事を忘れてしまう。


バイオリンでは今はまだ「乗っかってればいい」。
ちゃんと弾けるところは参加して、時々落ちてても「しゃーない」。
その立ち位置に居られることが楽しい。


こんなことを書くと先生に怒られるかもしれないが、私がこの合奏ですべき一番大事なことは一つ。


邪魔をしないこと


それだけ。
単に、主張しなければ良いだけなのだ。


それだけ・・・と言いながら、初心者にとってはそれすらも難しいことではある。
迷惑だけはかからないように、できるだけちゃんと音が並べられるようにする。勝手に出ない。音をのばし過ぎない。無駄に大きい音で弾かない。・・・私のレベルでもできること、意識すべきことはたくさんある。


音楽は先輩たちが作ってくれる


合唱をはじめて1年くらいの間だけ感じていた音楽に対するある意味新鮮で無垢な気持ち。
それを思い出せただけでも合奏レッスンに参加した価値はあったと思う。



さて、長くなってきたので、本番の模様はまた次回に持ち越すことにしよう。

お調子者がハマる罠

橋田先生のアンサンブルレッスン直後の出来事も少し語っておこう。

橋田先生のアンサンブルレッスンの後、他の4人の参加者と共に、私も坂本先生のアンサンブルレッスンに向かった。急遽、坂本先生のアンサンブルレッスンにも参加する・・・のではなく、8ヶ月にわたって教室から借りっぱなしであったバイオリンを返却するためである。したがって、実はこの日、私はバイオリン2艇持ちだった。


本町から心斎橋まで、地下鉄で一駅。
初乗り運賃の高い地下鉄に乗るのも馬鹿馬鹿しいので、徒歩で向かう事になった。

道中、良い機会ができたのでrauloopさんにMogaに合いそうな弦の相談をしながら歩く。
先生からは「華やかな弦を張って鳴らしてやりなさい」とアドバイスを受けたのだが、「華やかな弦」とはどれなのか全く判らず途方にくれていたのである。


   


私はもともと弦に興味を持って色々と試してみるようなタイプではない。保守派というか、「今使ってるヤツ」に固執するタイプである。だが、そのくせ人から「与えられる」物に対しては別に抵抗しない。あっさり新しいものを受け入れ、それが次の「保守」対象になる。


私の食べ物の好みというか、マイブームにそれが顕著に出ている。
自分からは「新たな」食べ物に手を出すことは絶対に無いが、与えられたら虫でも一応は食べてみる。そして、それだけでなく大抵はそれが好物となり前例を駆逐する。


例えば、私は18歳になるまで「親子丼」と「他人丼」以外の丼物を食べたことがなかった。
そういう店に行ったら、必ず親子丼しか頼まなかったし他のものに興味はなかった。ところが、大学に入って先輩に連れられ食べに入った某牛丼チェーンの牛丼に衝撃を受けた私は、最終的にその牛丼チェーンでバイトを始めてしまい、酷い時には三食牛丼だった。

また、別の例で、私はその昔「熱したトマト」を敵だと思っていた。
「酢豚に入っているパイナップル」や「幕の内弁当のみかんを半分に切ったヤツ」が許せないのと同じ心境である。よって、ナポリタンを除いて、他のトマト系のパスタを食べたことが22~23歳くらいまでなかった。ところがある時、当時はまだ彼女だった嫁に強引に一口食べされられて世界は一変した。今ではパスタ屋に入ったらトマト系のパスタ以外食べない。


そういう食べ物は他にも山のようにある。人参の葉、イナゴの佃煮・・・etc.


私は「食わず嫌い」のくせに「好き嫌い無し」というおかしな性格をしている。
一応断っておくが、だからと言って「さそりを生で喰え」とかそういう面白半分で無意味なチャレンジには応じないことになっている。あくまで「美味しいから喰ってみろ」と相手が目の前で食べているものを差し出された場合にしか受け入れない頑固じじいなのである。


話が逸れ過ぎて何の話か解らなくなって来てしまった。
とりあえず、私はそういう人間であるから、弦も手当たり次第に「どれが美味しいかなぁ」なんてことはしないのである。

そこに来てrauloopさんは弦マニア。
入門早々、プラチナ弦などを張って来て教室中を驚かせたのは今でも語り継がれる伝説となっている。私など未だに、そのプラチナ弦が何であるかを調べもしていないし、そもそもプラチナ弦の何がすごいのかも解らない。


そんな私に「とりあえずコレ試してみろ」というアドバイスをして欲しいというわけである。


   


私 「華やか系のギラギラしたやつで鳴らしまくれって言われてるんですよね」


rauloopさん 「確かに、ドミナント以外ので聞いてみたいですね」


rauloopさん「オブリガート試して欲しいですね」


私 「ほぅほぅ」


rauloopさん「あと、インフェルドの青とか・・・"パイ"とか」


― パイ?あぁ・・・円周率のアレか・・・。


そういえば"パイ"はブログのコメントでチワワさんにも薦められたことがあった気がする。


そんなこんなで心斎橋教室に着き、バイオリンを返納する。
そのついでに先生にも弦の相談。


私 「華やか系・・・っていうのがどれか判らんのですが・・・」


先生 「そうですねぇ。エヴァピラッツィ・・・とか、
あと、逆にこれ(レンタルのに)張ってるヘリコアを張って楽器の違いを感じるのも良いですよ」


― なるほど、それも一理あるな。


私 「rauloopさんに聞いてみたら、オブリガードとかどう?って言われました」


先生 「オブリガートも良いですね。オブリガーじゃなくてオブリガー! ね。」


私 「いつもながら末尾の処理が適当ですんません・・・」


私は言葉だけでなく、音楽でも最後の伸ばす音の長さとか「やりっぱなし」にするタイプで、いつもこういう所を怒られる。

その後、先生の使っている弦の話やガット弦の話になったが、マニアックすぎて全くついていけず、とりあえず、「ヘリコア」か「オブリガート」か「インフェルド青」あたりから選んでみようかなぁ・・・と一応の方向性だけは付けた。


   


さて、先生との話を終え、ついでに教室に掲示されている連絡事項などのメモをとったりしていると、いつの間にか完全に合奏レッスンがスタートする準備が整っていた。


― うぉ!はよ帰らな・・・


と思った時には既に遅く、コンミスが立ち上がってAを鳴らし始めた。
20人近くはいると思われるメンバーが真剣な面持ちで座って調弦を開始する。


― こりゃ・・・出ていけるタイミングを失ったなぁ・・・


本番が近いということもあるのだろうが、先程までの橋田レッスンとは全く違う緊迫した空気に圧倒される。休憩タイミングまでは出て行く勇気がないので、そのまま見学を決め込むことにした。


レッスンを見ていると早々に気付くことがいくつかあった。
まず、譜面台が二人で一つということ。

『のだめカンタービレ』のオケ風景でたしかそんな様なことが描かれていた気がするが、「ホンマにそうなんやなぁ・・・」と思った。

書込みとかどうするんやろ・・・と思っていたら、譜面台の左側の人が書き込むルールらしい。


だが「右側に座っていた」Fさんが、ペンを用意していなかった事を先生に咎められている。


Fさん 「私、書く側じゃないですよー」


先生 「先輩が罪を被るもんでしょ?」


まさかの体育会系レッスン。


さて、その時に書き込むべき内容は「練習番号」だった。
つまり、何小節目からは"A"とか、ここからは"B"とかでブロック単位で区切って練習をスムーズに進める為の識別番号である。合唱でもおなじみだが、合奏とかオケでも使うんだなぁ・・・と妙なところで感心をした。


先生 「練習番号 " H " の次は、" J " です」


どよめく、一同。


皆、思ったに違いない。

先生はアルファベットの順番を知らんのか・・・と。

だが、


先生 「オケでは、" I " は使いません。今でこそ印刷技術が発達していますが昔はね・・・」


印刷技術やフォントの概念が未発達だった時代、" I " と " J " は見分けが付きにくい場合も多く、しかも「前後」に並んでいて練習中に紛らわしいから " I " は使わなくなったということだそうだ。私のように字が汚い者にとってはナイスなシステムであると言えるだろう。


先生 「" H " の次は " J "、それがオケの常識です」


― ほへー・・・知らんかったなぁ・・・


いつか、合唱の方でこの知識を披露して「俺スゲー」しようと心に決めたが、なかなか " J " とかまで出てこないだろう。


   


30分ほどだったが、見ているだけでかなり勉強になることが多かった。


この見学で坂本先生の合奏レッスンにかなり興味を持ったが、参加はもう少し我慢しようと思う。
実は少し前から先生から「合奏参加しなさい」という「勧誘」ではなく「指令」を貰っているのだが、ぬらりくらりとかわしてきていた。

私は本来こういうモノには「参加したがり」である。
しかし、バイオリンを始めてまだ8ヶ月程度。あまり多くに手を出して曲あたりの練習密度が下がるのを懸念しているのだ。見たところ合奏メンバーは全員が私より先輩ばかりである。もう少しゆとりを持って弾けるようになってから参加したいという思いがある。弾くだけで精一杯という状態でアンサンブルに参加しても、周りも聞けず楽しくないのではなかろうかと思っている。


さて、一回目の休憩時間が来たので、こっそりと教室を後にすることにした。

ところが、


先生 「はーい。旦那がおかえりでーす


― ちょ・・・こっそり帰ろうとしたのに!


全員の注目が集まる。


先生 「次回の合奏、バッハと葉加瀬太郎・・・どっち参加しますか?」


私 「ぇ?」


この合奏レッスンは「本番単位」で企画される。
凛ミュージックの発表会、つまり「本番」に合わせてその都度曲を決めてメンバーを集めるというシステムだ。
次の発表会は4月下旬だが、その企画は既に決まっており、人数の関係からか2グループ組織される。その「どちらに」参加しますか?という事を問われているのである。


― そもそも、出るって言ってないし・・・


先生 「どっちにします?両方でも良いですよ?」


私 「ぁ・・・じゃあ、バッハで・・・」


先生 「旦那はバッハに参加するそうでーす」


― ハメられた・・・



人間、「出るか、出ないか」という二択なら、まだ「いやいやー・・・考えときますよー」とかわしやすい。だが「A,Bどっちにしますか」と言われたら、どちらかから選ばないといけないような気になるのだ。これは、営業手法としても有名な手である。

しかも、私はこういう「群集」を前にすると「ええかっこ」しようとして、場が「盛り上がる」方向の選択をしてしまうお調子者なのだ。きっとその性格も先生に読まれていたのだろう。


完全にしてやられて、坂本先生のアンサンブル練習にも結局参加することが決定した。








里子アンサンブル(終)-オマケ?-

レッスンを終えて片付け始めようとした時のことである。


橋田先生 「皆さんこの後、合奏ですよね?」


説明しよう。
信じがたいことに、私以外の4人はこの後、坂本先生のアンサンブルレッスンに向かうのである。
たった今まで90分にわたってアンサンブルレッスンを受けていたのに、小1時間後にはさらに2時間のアンサンブルレッスンが待っているという。この『バイオリン馬鹿』達と来たら、いったいどれだけバイオリンを弾けば気が済むのだろうか。

アンサンブルでどの曲をやっているだとかそういう話になったが、私はそちらのアンサンブルレッスンには参加していないし、あまりバイオリン楽曲というかクラシック楽曲に明るくないので全く話について行けない。

そして、しばらく話を聞いていると、


橋田先生 「じゃあ、ちょっとカヴァレリア弾いてみましょうか」


と、橋田先生と工藤先生の二人で一曲弾いてくれる事になった。

私は横文字が弱いのでハッキリ覚えていないが、たぶん、カヴァレリアだったと思う。発表会でもカヴァレリアの中のどれかをやるとかそういう話からそうなったのだ。


Fさん 「弾けるんですか?」


― いや・・・それは微妙に失礼なんじゃね?


そう心の中でツッコミを入れる。

お二人とも単に音大出とかいうだけでなく、海外の音大やアカデミーで学んだという天上人。さらに演奏活動を「各地」だけではなく「各国」でされており、指導者であると同時にプロの「演奏家」なのである。そのプロが「弾ける」と言った以上、我々の思っている「弾ける」の向こう側に在ると考えて良いだろう。


橋田先生 「弾けますよぉ」


― そらそうやわな


そう思って一人苦笑する。


少しだけ曲の説明があり、いよいよ弾いてくれることになった。
どうやら、二人でこの曲を合わせるのは初めてということらしい。しかし、一回だけ最初のところのテンポのすり合わせをしただけで、すぐに本番演奏となった。


高まる期待。

そして、演奏が始まる。


   


柔らかいピアノの前奏で曲は始り、ややあって少しためるようにしながらフルートが立ち上がる。

まず、フルートという管楽器が持つポテンシャルに圧倒された。
曲の出だしということもあり、おそらくはまだ mezzo forte レベルの音量だと思うのだが、音圧というのだろうか・・・それが身体に直に当たってくるのである。耳で聴こえているだけではなく、身体全体で音が触覚として感知されるのである。

そして、この『mezzo forte レベル』と私が感じたというところがまたポイントである。
音量的には私のバイオリンの fortissimo よりもまだ何倍も音量がある気がするのだが、音の「意志」とでも言おうか・・・それがまだ「今は音楽が始まったところである」と言っている。「これからだよ」と告げている。今は「まだ半分も鳴ってません」と楽器が余裕の表情を見せている気がしたのだ。


そして、ピアノ。

『この曲を二人は今突然に合わせてみた』というのは本当なのだろうか。まるで半年くらいかけてビッチリ練習してきたかのような息の合い方。

フルートを邪魔しない。
しかし、機械的な伴奏ピアノというわけでは無い。

次にフルートが「こう来る」ということを知っているかのようなピアノ。
ピアノが「こう来てくれる」ということを知っているかのようなフルート。

ピアノがフルートに合わせているのか、フルートがピアノに乗っているのか・・・。

きっと、そのどちらでもないのだろう。

今、この場で一回きりの音楽が創られているのである。


主旋律を歌うように奏でていく工藤先生に「合わせている」のではなく「はじめからそう決まっている」とすら思えた。二人は今、二人だけにしか解らない世界で会話をしているのである。


― 凄すぎる


先程までのアンサンブルレッスンでも二人は弾いてくれていたが、その時には二人は「遠慮して」弾いてくれていたのだと今更ながらに痛感した。我々を「ひっぱり」ながらも、完全に「合わせに」来てくれていたのである。

鳴っている音のレベルの桁が違う。


― これが、『聴き合う』という事か・・・


次元の違う音楽がそこにある。


曲はクライマックスへ向かい始めた。
mezzo forte から forte、そして fortissimo へ。

爆発的なエネルギーを発し始めるフルートとピアノ。
このエネルギーをたった二人の人間だけで創り上げているとは信じがたい。


そして、このあたりから、私は左手に強く振動を感じるようになった。

左手には私のバイオリン。Moga Georgata。


― バイオリンが呼応してる


曲に合わせてMogaがビリビリと振動している。
想像を絶する音の波を至近距離で受けて、バイオリンが激しく共鳴しているのである。


そしてフィナーレへ。


この曲のテーマというのだろうか・・・雑多な表現をすると「サビ」をなんども繰り返してフィナーレに向かうのである。すごく良いメロディなのだが、曲名もわからないし音符を示す事も出来ない。私は耳で聞いただけでは音符として再現できないので、ここでそれを言葉として表現する術を持たない自分が歯がゆい。


「サビ」を繰り返しているが、同じではない。

前より強く、エネルギッシュに、感動的に。

正直、私は演奏を聞きながら涙をこぼしそうになっていた。


そして、呼応するMogaの振動も尋常ではない。


― Mogaが喜んでいる


そう思った。


― そうか・・・お前もこれくらい歌いたいか・・・


だが、それは簡単に叶うことでは無い。
20年先か30年先か・・・血の滲むような努力の果てにも叶う保証のない高み。


ただ、今はずっとこの音楽に浸っていたい・・・そう思ったが、柔らかな余韻を残して曲は終わりを迎えた。


   


『先生が弾いてくれたから』というありがちな社交辞令ではなく、心からの本気の拍手が沸き起こる。今、心に受け止めたものが溢れてきて、どうにかして体の外に動きとして表現せずには居られないのである。


橋田先生 「工藤先生、突然すいませんでしたー」


工藤先生 「いえいえー」


何でもないことが行われただけ・・・といった風の二人。

そして、本当に即興演奏だったようである。
もし、コンサートに出すつもりで真剣に二人で音楽を創ったら一体どうなるのだろうか。それを想像すると期待感と好奇心よりもむしろ、恐れの感情すら沸き上がってくる。今すぐ目の前でそれをされたら、心が受け止め切れずにおかしくなってしまいそうだからである。


直前まで自分たちもアンサンブルをやったからこそ思う凄さ。
今目の前で行われた演奏が教えてくれた大切な事。


弾けるとか弾けないとか、音が正しいとか正しくないとか、ピッチが高いとか低いとか、リズムが正確かどうかとか・・・そんなことの向こう側にそびえているとてつもない世界。私がこれまでやってきた音楽など合唱を含めても「ママゴト」なのである。


橋田先生 「最後に良いオマケになりましたねー」


― いやいや・・・むしろメインですよ。


オマケどころか、最後の最後で今日一番大事なことを教わった気分である。


― 橋田レッスン。こりゃあハマるね。うん。


初めての橋田レッスン、それは満足を通り越して感動なのであった。


了。
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ぷぃぷぃ 虫

Author:ぷぃぷぃ 虫
酒飲み三十路男。
ふと思いつきでバイオリンを初めてしまう。合唱歴は10年超えだが楽器は素人。
ひょんな事からヴィオラも初め「させられる」。レイトスターターながらスイッチプレーヤーを目指すことに・・・

職業 SE。やぎ座のA型。

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