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里子アンサンブル(終)-オマケ?-

レッスンを終えて片付け始めようとした時のことである。


橋田先生 「皆さんこの後、合奏ですよね?」


説明しよう。
信じがたいことに、私以外の4人はこの後、坂本先生のアンサンブルレッスンに向かうのである。
たった今まで90分にわたってアンサンブルレッスンを受けていたのに、小1時間後にはさらに2時間のアンサンブルレッスンが待っているという。この『バイオリン馬鹿』達と来たら、いったいどれだけバイオリンを弾けば気が済むのだろうか。

アンサンブルでどの曲をやっているだとかそういう話になったが、私はそちらのアンサンブルレッスンには参加していないし、あまりバイオリン楽曲というかクラシック楽曲に明るくないので全く話について行けない。

そして、しばらく話を聞いていると、


橋田先生 「じゃあ、ちょっとカヴァレリア弾いてみましょうか」


と、橋田先生と工藤先生の二人で一曲弾いてくれる事になった。

私は横文字が弱いのでハッキリ覚えていないが、たぶん、カヴァレリアだったと思う。発表会でもカヴァレリアの中のどれかをやるとかそういう話からそうなったのだ。


Fさん 「弾けるんですか?」


― いや・・・それは微妙に失礼なんじゃね?


そう心の中でツッコミを入れる。

お二人とも単に音大出とかいうだけでなく、海外の音大やアカデミーで学んだという天上人。さらに演奏活動を「各地」だけではなく「各国」でされており、指導者であると同時にプロの「演奏家」なのである。そのプロが「弾ける」と言った以上、我々の思っている「弾ける」の向こう側に在ると考えて良いだろう。


橋田先生 「弾けますよぉ」


― そらそうやわな


そう思って一人苦笑する。


少しだけ曲の説明があり、いよいよ弾いてくれることになった。
どうやら、二人でこの曲を合わせるのは初めてということらしい。しかし、一回だけ最初のところのテンポのすり合わせをしただけで、すぐに本番演奏となった。


高まる期待。

そして、演奏が始まる。


   


柔らかいピアノの前奏で曲は始り、ややあって少しためるようにしながらフルートが立ち上がる。

まず、フルートという管楽器が持つポテンシャルに圧倒された。
曲の出だしということもあり、おそらくはまだ mezzo forte レベルの音量だと思うのだが、音圧というのだろうか・・・それが身体に直に当たってくるのである。耳で聴こえているだけではなく、身体全体で音が触覚として感知されるのである。

そして、この『mezzo forte レベル』と私が感じたというところがまたポイントである。
音量的には私のバイオリンの fortissimo よりもまだ何倍も音量がある気がするのだが、音の「意志」とでも言おうか・・・それがまだ「今は音楽が始まったところである」と言っている。「これからだよ」と告げている。今は「まだ半分も鳴ってません」と楽器が余裕の表情を見せている気がしたのだ。


そして、ピアノ。

『この曲を二人は今突然に合わせてみた』というのは本当なのだろうか。まるで半年くらいかけてビッチリ練習してきたかのような息の合い方。

フルートを邪魔しない。
しかし、機械的な伴奏ピアノというわけでは無い。

次にフルートが「こう来る」ということを知っているかのようなピアノ。
ピアノが「こう来てくれる」ということを知っているかのようなフルート。

ピアノがフルートに合わせているのか、フルートがピアノに乗っているのか・・・。

きっと、そのどちらでもないのだろう。

今、この場で一回きりの音楽が創られているのである。


主旋律を歌うように奏でていく工藤先生に「合わせている」のではなく「はじめからそう決まっている」とすら思えた。二人は今、二人だけにしか解らない世界で会話をしているのである。


― 凄すぎる


先程までのアンサンブルレッスンでも二人は弾いてくれていたが、その時には二人は「遠慮して」弾いてくれていたのだと今更ながらに痛感した。我々を「ひっぱり」ながらも、完全に「合わせに」来てくれていたのである。

鳴っている音のレベルの桁が違う。


― これが、『聴き合う』という事か・・・


次元の違う音楽がそこにある。


曲はクライマックスへ向かい始めた。
mezzo forte から forte、そして fortissimo へ。

爆発的なエネルギーを発し始めるフルートとピアノ。
このエネルギーをたった二人の人間だけで創り上げているとは信じがたい。


そして、このあたりから、私は左手に強く振動を感じるようになった。

左手には私のバイオリン。Moga Georgata。


― バイオリンが呼応してる


曲に合わせてMogaがビリビリと振動している。
想像を絶する音の波を至近距離で受けて、バイオリンが激しく共鳴しているのである。


そしてフィナーレへ。


この曲のテーマというのだろうか・・・雑多な表現をすると「サビ」をなんども繰り返してフィナーレに向かうのである。すごく良いメロディなのだが、曲名もわからないし音符を示す事も出来ない。私は耳で聞いただけでは音符として再現できないので、ここでそれを言葉として表現する術を持たない自分が歯がゆい。


「サビ」を繰り返しているが、同じではない。

前より強く、エネルギッシュに、感動的に。

正直、私は演奏を聞きながら涙をこぼしそうになっていた。


そして、呼応するMogaの振動も尋常ではない。


― Mogaが喜んでいる


そう思った。


― そうか・・・お前もこれくらい歌いたいか・・・


だが、それは簡単に叶うことでは無い。
20年先か30年先か・・・血の滲むような努力の果てにも叶う保証のない高み。


ただ、今はずっとこの音楽に浸っていたい・・・そう思ったが、柔らかな余韻を残して曲は終わりを迎えた。


   


『先生が弾いてくれたから』というありがちな社交辞令ではなく、心からの本気の拍手が沸き起こる。今、心に受け止めたものが溢れてきて、どうにかして体の外に動きとして表現せずには居られないのである。


橋田先生 「工藤先生、突然すいませんでしたー」


工藤先生 「いえいえー」


何でもないことが行われただけ・・・といった風の二人。

そして、本当に即興演奏だったようである。
もし、コンサートに出すつもりで真剣に二人で音楽を創ったら一体どうなるのだろうか。それを想像すると期待感と好奇心よりもむしろ、恐れの感情すら沸き上がってくる。今すぐ目の前でそれをされたら、心が受け止め切れずにおかしくなってしまいそうだからである。


直前まで自分たちもアンサンブルをやったからこそ思う凄さ。
今目の前で行われた演奏が教えてくれた大切な事。


弾けるとか弾けないとか、音が正しいとか正しくないとか、ピッチが高いとか低いとか、リズムが正確かどうかとか・・・そんなことの向こう側にそびえているとてつもない世界。私がこれまでやってきた音楽など合唱を含めても「ママゴト」なのである。


橋田先生 「最後に良いオマケになりましたねー」


― いやいや・・・むしろメインですよ。


オマケどころか、最後の最後で今日一番大事なことを教わった気分である。


― 橋田レッスン。こりゃあハマるね。うん。


初めての橋田レッスン、それは満足を通り越して感動なのであった。


了。
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comment

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No title

アンサンブルレッスンってどんな物なのか想像もついていませんでしたが、こんなんなんですねー。すごく内容の濃いレッスンで驚きました。ぷぃぷぃ虫さんの文章はいつも映像が浮かびます。浮かんだ映像は私の勝手なイメージなので実際とは全然違うでしょうが・・・(^^;)

そして先生方のアンサンブルで素晴らしい体験が出来てよかったですね!ぷぃぷぃ虫さんの感受性も素晴らしいなぁと思いました。おかげで聴いてもいないのに感動をお裾分けしてもらった気分です。

Re: No title

ぴっぴさん

こんにちわ~

一般的なアンサンブルレッスンがどんなものなのか分かりませんが、私の初レッスンはこんな感じでした。
テンションが上がってしまって思わず長編になってしまいましたが・・・(;´Д`)


感受性が良いと言われると、音楽をやるものとしてはすごく嬉しく思います。単におっさんになって涙腺緩んできてるだけかもしれませんが(笑)


自分は「文章長いなぁ・・・」と思っているのですが、それで少しでも情景が詳しく伝わっているのならこれほど嬉しいことはありません。これからもどうぞお付き合い下さいませ(´∀`*)
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プロフィール

ぷぃぷぃ 虫

Author:ぷぃぷぃ 虫
酒飲み三十路男。
ふと思いつきでバイオリンを初めてしまう。合唱歴は10年超えだが楽器は素人。
ひょんな事からヴィオラも初め「させられる」。レイトスターターながらスイッチプレーヤーを目指すことに・・・

職業 SE。やぎ座のA型。

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