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未曾有の絶不調(下)

レッスンを終えるとちょうどお昼時だったので、嫁と合流して大阪駅前第二ビル地下二階の『四国のさぬきうどん』で昼ごはんにした。


名物の鶏卵うどんが二日酔いの体を癒す。
ちなみに私は二日酔いの日の昼食は基本的に鶏卵うどんと決めている。


さて、なぜ第二ビルかというと、プロ・アマ問わずおそらくは大阪中のあらゆるジャンルのミュージシャンがお世話になっているであろう楽譜屋、ササヤに行くためである。ここに行けば、少々マニアックな楽譜だとしても、たいていの楽譜は手に入る。逆にここで入手できなければ、その楽譜は簡単には手に入らない楽譜と言える。

日曜日の午後にここで楽譜を物色していると、同門の生徒さんや合唱仲間に出会うことが良くある。


さて、この日の目的は、直前のレッスンで購入を指定されたホーマンの3巻とカイザーを入手することである。
どこにでもありふれた練習教本なのでササヤでなくても手に入るのだが、いわゆる「カイザー」である3冊に分かれた全音の白い教本ではなく、原典に近い一冊もののカイザーが欲しかった。これは、そこらの楽器屋や本屋には置いていない。


私はササヤを侮っていた。


なんと、"一冊もの"のカイザーは3種類もあったのだ。
しかも内容が全て異なっている。楽譜自体は同じなのだが、解説や指の指定が違う。
さらに、厄介な事にバリエーションの指定が三冊とも異なっている。当然、いわゆる「カイザー」である全音版とも異なっている。


恐るべしササヤ。


先生から「一冊もののカイザーでも、分冊の普通のカイザーでもどっちでも良いよ」とだけ言われていたので、どれを選んで良いか分からない。そもそも、「普通は全音の白いヤツやのに、俺だけ一冊ものやったらちょっとカッコええやん」という中学生レベルの発想なのだ。


結局、散々迷った挙句無難に"普通の"カイザーを選んだ。
これが、絶不調の時でなければ「変な方を選ぶ」のが本来の私である。
普段なら確実に、"一冊もの"の中から最も意味のわからないものを選択していたに違いない。


そして、購入直後に先生から、「別にバリエーションは関係ないから一冊ものでもよかった」という内容のメールをもらい、激しく後悔した。趣味の世界における『冒険か安牌かの選択』で、安牌を選択した自分のつまらなさに憤りを感じたのである。


― 個の不調が全体をつまらなくしつつ有る


この、スパイラルでは不調を抜け出せるとは思えない。
何かを劇的に変えなければ。


   


ふと、有ることに思い当たった。


そうだ、弓の毛を変えてみよう


自分のフォームや、周辺小物などをさんざん色々いじくりまわしたが、本丸は触っていない。
弓とバイオリン本体には手を入れていない。


そういえば、バイオリンを購入してそろそろ1年になるが、一度も弓の毛を換えていない。
交換は年に一度と言うし、そろそろ換え時なのではなかろうか。


それを嫁に提案し、心斎橋にある楽器店に向かうことになった。


しかし、気がかりがある。
時間は既に16時前、今から毛替えをして今日楽器は戻ってくるのか・・・という事である。如何に絶不調で楽器を触るモチベーションが下がっているとは言え、丸々一週間も預けきるというのは辛い。


そこで、梅田から心斎橋に向かう道中、嫁に身勝手な提案をする。


私 「毛替えはもしかすると今日中に終わらないかもしれん」


嫁 「ふんふん」


私 「でも、一週間もロックされるのは辛い。だから、明日とか、取りに行ってくれたりせぇへん?」


嫁 「別にええけど。残業続きやし、明日行けると確約は出来へんでー」


私 「んー。まぁ、それはしゃーないやろ」


嫁 「弓、新しいの買うたらええやん


私 「は?・・・いや、一応検討はしてるのはしてたけども・・・」


嫁 「そしたら しずおさん(注)ともペアの弓できるし、最高やん」

注)しずおさん=サイレントバイオリン (静かだからしずおさん)


相変わらずの嫁である。


   


楽器店に到着すると、いつも整備をお願いしている職人さんに、開口一番。


嫁 「弓買いに来ました


私 「ぇ?・・・ちが・・・弓の毛替えに来ました。」


嫁よ・・・世の中の奥方というやつは普通、旦那のそういう買い物を止めようとするものなのだよ。


嫁の暴走はともかく、全て今日中に出来るということなので、毛替えの依頼と共に、もう一つ重大な調整を依頼をした。
それは、駒の削り直しである。


毒を食らわば皿まで。
どうせ崩れたなら、とことんいじりきってそれから再構築することに決めた。


困ったら何でも良いから激しく動きまわる


それが、私のモットーである。


とは言え、これは適当な思いつきではない。

実は、私の駒は弦を受けている溝の彫りが深く、完全に駒の中に弦がめり込んだ状態になっている。本来は弦は駒から少し頭を出している状態になるべきなのである。
また、駒の頂点部分に購入時から小さな傷がある。

私のバイオリンは日によって、特定の音が綺麗に鳴らないというウルフの様な現象が発生するのだが、その原因が "埋没" か "傷" のどちらかである可能性は否定できないことを以前に先生が言っていたことを突然思い出したのである。

当時、その現象は、その音だけを駒から離して弾くこと(所謂ウルフの回避方法)で回避できていたし、「駒を削ると移弦の感覚には微調整が必要」というリスクとの天秤で結局、手を入れない事を選択した。

だが、今は事情が違う。


触るなら今だ


そう判断した。



   



その判断は正しかった。


調整を終えたバイオリンを家に持ち帰って、弾いてみると度肝を抜かれた。


全然違う!!


良くなったなんてものではない。
これが同じ楽器か・・・そう思った。

朝にはあれほどバリバリと不快音を立てていた特定音でのウルフ現象は嘘みたいに消えていた。
カスれも圧倒的に改善されている。


以前に感じていた「弓が弦に吸いついていく感覚」を右腕が急速に取り戻しはじめたのが感じられた。


悪かったのは弓か駒か・・・。


ともかく楽器が劣化していた事は間違いが無いようだ。


そして、それからは取り付かれたようにホーマンの2巻をさらった。
音程の精度と右手の安定性が一曲ごとに改善していくのが感じられた。
まだ全てが完全に戻りきったわけではないが、朝とは明らかに異なるパフォーマンス。


ふと、何かスイッチが入った気がした。
楽譜を見たら考える前にダイレクトに指が押さえに行くこの感じ。


そう、久々の神降臨モード


こうなると練習は止まらない。
いくら弾いても疲れないし、ずっとバイオリン弾いていたいという気持ちになる。

そして、どういう訳かこの状態の時は無性に楽譜が欲しくなる。
新しい、弾いたことのない初見楽譜を欲する。
一体どういうことなのか自分でも不思議だ。


購入したばかりのカイザーが気になったので、早速弾いてみる。
完全に初見。


あれ?弾ける・・・


1番が初見で普通に弾けたことに驚きを隠せなかった。
楽譜的にそれほど難しく無いというのもあるが、簡単な楽譜であっても私のレベルでは初見をインテンポでやるのは容易な事ではない。

さらに、驚くべきことに、普段は今出している音と次の音くらいしか目で追っていけないのに、この状態の時はうっすらと次の小節まで俯瞰できる事である。
先を見越した効率的な指使いが勝手に決定されているのである。


人差し指を残しておくのか、次に行っておくのか。
最初から2の指と同時に1を押さえておくのか。
開放弦をつかうか4を使うか。

・・・

それらを見るともなく見て、手が勝手に動く。

楽譜のパターンから直接手の形が決まっているとでも言おうか・・・勝手にそこに指が置いてあるのを、右手があとからゆっくり舐めていくというそんな感覚がある。左手が勝手に動いているので右手は音楽にこだわりはじめる。強弱や表情をつけにかかろうとする。


何故それが出来るのか全く理解ができないし、いつも出来るわけでない。


その後、13小節目~18小節目までの進行が好みであることに気付いた私は、如何にそこを豊かに美しく弾くかについて30分以上かけてネチネチと練習をする。
久々にバイオリンで『音楽をした』という満足感。


数ヶ月に一度こうして突然やってきてまた去っていく神降臨。


― あぁ・・・絶不調やったけど何も育ってないわけとちゃうんやね


神降臨は月に一回あるかないかだが、そのたびに確実にレベルが上がっているとは思う。


― 常にこれやったらええのになぁ・・・


さて、問題は神降臨モードは「自分がめっちゃイケてた」という記憶以外はなにも残さないことである。
翌日に凡人に戻った私は、あれほど簡単に弾けた曲が、全く弾けないというその落差に毎回はげしく落胆するのだが、今夜はどうだろうか。


少なくとも光明は見え始めていると思いたいものである。
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ぷぃぷぃ 虫

Author:ぷぃぷぃ 虫
酒飲み三十路男。
ふと思いつきでバイオリンを初めてしまう。合唱歴は10年超えだが楽器は素人。
ひょんな事からヴィオラも初め「させられる」。レイトスターターながらスイッチプレーヤーを目指すことに・・・

職業 SE。やぎ座のA型。

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