真 復活編02 -ボウイング再構築-

久しぶりにモガを鳴らした。


― ひどい音だ・・・


カスカスでギリギリという音がなる。
もともとモガは気分屋なところがある楽器だが、このひどい音は完全に私の腕によるものだ。


弓がまっすぐ引けない。


前後に腕がぶれ、バイオリンに対して弓を直角に維持できない。
さらに、駒からの位置も一定に保てない上、弓を動かす面がぶれて隣の弦を頻繁に触る。
これだけ動きが安定しないと「載せられない」ため、カスカスの音しかでないのだ。


― ぁー・・・これは解放弦からやり直しだな・・・


調弦だけでも・・・と思っていたが、重音がまともに弾けない。
単弦でもまともに弾けないである。重音は論外だった。


諦めてひとまず、全弦チューナーを頼りに調弦をすることにした。
しかし、合わない。

数ヶ月触っていないペグが弦によって硬すぎたり柔らかすぎたりして良いところで止まらない。止まってもすぐに緩む・・・を繰り返す。特にG線は何度合わせてもちょっと弾くとピヨーンと緩む。

格闘すること10分弱。
なんとか全弦の調弦を許容範囲内に収めた。


  


とりあえず、左手は後まわしにする。
右手から・・・いや、バイオリンの持ち方からだ。


冷静に自分を見てみるとバイオリンの糸巻きが肩よりも遥かに高い位置に上がっていた。
調弦の格闘で体に力が入ってしまい肩と顎で「ぐっ!」っとバイオリンを持ち上げてしまっているのだ。

これを緩める。

楽器を一度おろして肩周りをストレッチする。
そして、構えて降ろす・・・を繰り返す。
『顎で挟み過ぎない』ことを意識してふわっと顎当てを顎にちょっと引っ掛けるようにして持つ。

幸い「収まる場所」は体が覚えていてくれたようだ。


  


次に弓を持つ右手に目を向けると、これまた「浅い」と思えた。
指先でつまむような持ち方になってしまっている。
その為か、調弦で鳴らしている間にも頻繁に「持ち直し」が必要だった。

「弓の持ち方」の最終形そのものを思い出すのではなく、本当に初心の時に習った「弓の持ち方」の作り方、プロセスの方を思い出す。

手を「ゆるいキツネ」にして、手のひらの内側に弓を通し、親指は一旦フロッグの外側から全体をガバっと握りこんでから毛と弓の間に置き直す。こうするとガチッと安定して弓を持つことができる。

先生には「弓の持ち方が浅くなりかけたら時々やると良いですよ」とアドバイスをもらっていた。まさに今、その教えが活きる瞬間である。

感覚的なところなので説明が難しいが、やってみると「ぉ、これこれ」と思える場所に一発で落ち着いた。幸い弓の持ち方も「収まるところ」を手が思い出してくれたようだ。


後から思ったが、この時点でこの日の「ノルマ」が「バイオリンをケースから出す」であったことはすでに完全に忘れていた。


  


― さて・・・やっとこさ開放弦だな・・・


開放弦の「リハビリ」でも助けてくれるのはやはり過去の教えである。
バイオリンを初めてから2回目のレッスン時の様子がこのブログに記録されているが、まさにそれをフラッシュバックさせるかのようにさらった。


テンポ60、全音符のロングトーンを開放弦のD線・A線を使って全弓で弾く


重要なのは無理に弓を真っ直ぐに持って行こうとしない事。
意識の上では真っ直ぐを目指すが、腕で無理に「まっすぐ」を作らない。肩と腕の付け根の筋肉を緩めて、各部を無理なく正しく動かした結果まっすぐであるように持っていく。

最初に弓が弦の上通る位置を目視でチェックしながら駒近くに固定していく。
この時は隣の弦をさわろうが、弓が少し斜めになっていようが一旦気にしない。駒近くを通っている時の「弦の反発具合」の感覚を右手に思い出させる。

 

ある程度気が済んだら、次は前後の補正。つまり、弓が斜めに走っているのを補正する。
特に意識するのは「ダウンの最後」である。

・手は思っているよりも向こう側まで行く
・肘は思っているより下まで来る



そのためには肩が緩んでいないとその位置まで手も肘も行かない。

人間の腕は構造的に見て円運動に向いている。
よって、バイオリンを弾いたことが無い人が何も考えずに弓を動かすと、肘はかなり内巻きに身体寄りに向かって動き、結果として弓は斜めに動く。長いブランクがあったり、あるいは、ボウイングを適当にやっていると同じように「本来の腕の得意な動き」にしたがってまっすぐ崩れて行く。

どうおかしいのかは感覚的にチェックするしかないが、何をチェックすべきかは過去に教えられた理論から引きだす。

各部はどう動くのが正解か?
その通り動いているか?
思った通りに動いていないのはどこがおかしいのか?
おかしくなっているのは何故か?
どこを緩める・伸ばすと良いか?



これらを分解し分析し、理論と感覚と実際の動きを合わせていく。

この時も肩の周りがこわばっていて肘が下がらず、その為に腕の動きが制限されて肘が内向きに動いていた。「全弓を使って」という意識が別にあるため、さらに無理に腕を後ろ側に引くような動きになってしまっている。これでは右手の動きが円に向かってるので弓がまっすぐになるはずもない。

まず、肩と腕の付け根の筋を緩める。
ダウンの最後で腕の力を抜き、腕の重みで肩が引っ張られる位、大げさに言えば肩の骨が外れるようなイメージで大げさにやる。当然、一旦ボウイングは崩れるが気にしない。

これで腕全体の可動域が広がるので、手を右前に押し出すように肘から先を伸ばすイメージで補正していく。緩めすぎると、面がぶれてダウンの最後で隣の弦(高音側)を触ってしまうので、肩周りの緩め具合を適度なところに調整する。

これで前後はかなり補正できた。

 

次に、動く面の補正。時々隣の弦を触ってしまうのは面が崩れているのだ。
私が面の補正で意識するのは「アップボウの最後」、肘が上がっている状態である。

・アップボウの後は思ってるより肘が上がる。
・でも肩は上がらない



これも過去の自分がブログに残している先生のアドバイスだ。
肘から先だけで持っていくと腕の可動域の制限によりアップボウの最後で動きが窮屈になり、弓の動きが安定しなくなる。
それを手先で補正しようとするため面がブレる。

私の過去のパターンでは、肘が上がっていない時は手前の弦(高音側の弦)を触りやすく、方が上がってしまっているときは向こう側の弦(低音側の弦)を触りやすい。この時は手前を触ったり向こう側を触ったりしていた。つまりアップボウの後半の動きがめちゃくちゃということだ。

これもダウンの時と同様に肩周りの脱力をかなり意識したままで、アップの後半で腕を「そぉい!」と持ち上げるイメージで補正していく。

 

これらを順に積み上げ、そして意識的に肩周りの力を抜いていく。
あるポイントを補正すると別の所が崩れたりするので、少しずつ纏めながら全体を補正してそれを連続的に滑らかに出来るように右手に神経を配る。


やがて、「ぉ・・・こんな感じの感覚だったよね」という範囲に収まりはじめた。
すると、最初は不規則な振動を見せていた弦が大きく円を描く振動に変わって行く。

弦を引っ掛けて手で引っ張る感覚が戻ってきた。音が変わり始める。


よし・・・鳴ってきた。


弦が円で振動している時は弓がほぼ完全にまっすぐに動いている証拠。

ここから腕の重さを載せていく。
私のイメージは「下に向かって重みを乗せる」のではなく、「円を大きくするために引っ張る」イメージだ。


― よしよし・・・こんな感じ。こんな感じ。


単弦の開放弦は数日リハビリすれば何とかなりそうだ。


  


今更ながら私は一人で勝手に先生に感謝していた。

私のバイオリン技術は、見取り稽古と反復による刷り込みで意味も理由もわからず覚えたものでは無い。初めての時もこうやって理論的に科学的に教えられたのである。

理論的に教えられて理解して身につけたことは、一度失っても同じ理論で同様に再構築可能だ。

レイトスターターの社会人なんちゃってバイオリニストとしては楽器を弾けない時期があるのも仕方がない。そんな時にこうして自分である程度再構築できるのはありがたいことなのだ。


もちろんまだ完全には戻っていない。
移弦でくずれるし、単弦でもまだ音の立ち上がりと弓の止め・切り返しに不満が残っていた。
もちろんこれらへの対処法も教えられているし、ブログを読み返せばどこかに書いてあるだろう。

しかし、ボウイング補正の続きは後日にすることにした。
やり過ぎて嫌気がさしてしまっては元も子もないのである。


― さて、とりあえず一旦置いて、次は左手だな・・・


続く。
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復活おめでとうございます。
何度目なんだ(笑)
僕も前の先生の話はときどき思い出します。
本格稼働しましたら、デュオしましょ。
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プロフィール

ぷぃぷぃ 虫

Author:ぷぃぷぃ 虫
酒飲み三十路男。
ふと思いつきでバイオリンを初めてしまう。合唱歴は10年超えだが楽器は素人。
ひょんな事からヴィオラも初め「させられる」。レイトスターターながらスイッチプレーヤーを目指すことに・・・

職業 SE。やぎ座のA型。

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