里子アンサンブル(04)-充実感-
再びテーマ楽譜に戻って、まずはバイオリンだけで合わせてみる。
ふと、先程よりゆとりがある自分に気付く。
細かい動きが多かったバリエーションⅠと異なり、縦が揃っていてテンポ感がつかみやすいため相対的に簡単に感じるのである。そうすると、自然と他パートを聴いて、感じて呼応しようとする自分がいる。それは、きっと合唱をそれなりに長くやっているからだろう。こういったアンサンブルでは周りのパートを聞いて「空気を読む」という癖が染み付いているのである。
橋田先生 「今、ぷぃぷぃ虫さんだけは周りをチラ見しながら弾いてたんですよ」
それを褒めてくれる橋田先生。
橋田先生 「これは大変良いことですよ。」
しかし、おもわず苦笑してしまう。
それは別に私がすごいわけでもなんでもなく、テーマ楽譜での私の担当パートは音数が少なく、リズムもあまり難しくないからこそ可能だった・・・というだけのことだからである。特に前半はラとソ#の二つしか音がないし、小節丸々をのばしているだけという所も多い。バイオリンに限らずだと思うが、ロングトーンが多く登場するような伴奏パートは自分の頭でリズムを刻んだり数えたりするより、周りを感じていたほうが楽なのである。
よく大学の合唱団では「一年生が一番暗譜している」というような事がある。
一年生の多くは「和声の中の自分の役割」を理解していないし、「和音が変わりそうな空気感」という感覚も知らない。拍を数えずに「感じて入る」ということも出来ない。そうすると、楽譜を丸暗記するしかないわけで、強弱記号はもちろん、細かい音楽記号も含めてかなり細かく覚えている。
しかし、上級生になると良くも悪くも「手の抜き方」を覚える。
音形は大体覚えているが、長く伸ばすようなところが何拍なのかは正確に覚えていなかったりする。掛け合いがある所も「この小節の何拍目をフォルテで」とかそういう覚え方はしない。他のパートのこの音形が来たら「ええ感じで乗っかる」とかそういう覚え方をする。よって、逆に自分のパートだけで歌うのが苦手になったりする。
少なからず私にもそういう「手を抜く技術」が身についており、それが勝手に出てしまったというわけである。音さえ取れてしまったら、後は周りを聴いたほうが楽なのだ。
二回目。再びバイオリンだけで合わせてみる。
「お互い聞き合って」ということが全員に意識された為か、かなり縦が揃ってきて綺麗になり始めている。
今日のこれまでの演奏の中では今回が一番だったのではないだろうか。
橋田先生 「どうですか?ちゃんと聴けましたか?」
そう言って鋼のかっぱえびせんさんに振る橋田先生。
鋼 「ぷぃぷぃ虫さんしか聞こえませんでした」
― またか・・・
橋田先生 「やっぱりすごい存在感ですねぇ」
― デカくてすいません
一匹だけすごいゴツイ"ます"になってしまった。
全体的にピッチも安定してきて、リズム的にも揃い始めており、だんだん「音楽」になってきたので、つい入って行ってしまったのだ。
橋田先生 「5人ともが全パートを聞いてやるんだという気持が大切です」
さらに、
橋田先生 「リーダーのrauloopさんの弾き方、スタッカートをどう切っているかとか、そういう事も意識して歩み寄って行きましょう」
気がつけば『弾いて合わせるので精一杯』という状態から『音楽を作っていく』という段階に引き上げられている。
この後、何度かフルートとピアノを入れて全パートで弾き、すごく「上手くなった感」を持ってレッスンは終了となった。
そもそもついて行けるのかどうかと心配しながら参加したアンサンブルレッスンであるが、思っていたよりも何倍も充実感を持って終えることができたわけである。
ふと、先程よりゆとりがある自分に気付く。
細かい動きが多かったバリエーションⅠと異なり、縦が揃っていてテンポ感がつかみやすいため相対的に簡単に感じるのである。そうすると、自然と他パートを聴いて、感じて呼応しようとする自分がいる。それは、きっと合唱をそれなりに長くやっているからだろう。こういったアンサンブルでは周りのパートを聞いて「空気を読む」という癖が染み付いているのである。
橋田先生 「今、ぷぃぷぃ虫さんだけは周りをチラ見しながら弾いてたんですよ」
それを褒めてくれる橋田先生。
橋田先生 「これは大変良いことですよ。」
しかし、おもわず苦笑してしまう。
それは別に私がすごいわけでもなんでもなく、テーマ楽譜での私の担当パートは音数が少なく、リズムもあまり難しくないからこそ可能だった・・・というだけのことだからである。特に前半はラとソ#の二つしか音がないし、小節丸々をのばしているだけという所も多い。バイオリンに限らずだと思うが、ロングトーンが多く登場するような伴奏パートは自分の頭でリズムを刻んだり数えたりするより、周りを感じていたほうが楽なのである。
よく大学の合唱団では「一年生が一番暗譜している」というような事がある。
一年生の多くは「和声の中の自分の役割」を理解していないし、「和音が変わりそうな空気感」という感覚も知らない。拍を数えずに「感じて入る」ということも出来ない。そうすると、楽譜を丸暗記するしかないわけで、強弱記号はもちろん、細かい音楽記号も含めてかなり細かく覚えている。
しかし、上級生になると良くも悪くも「手の抜き方」を覚える。
音形は大体覚えているが、長く伸ばすようなところが何拍なのかは正確に覚えていなかったりする。掛け合いがある所も「この小節の何拍目をフォルテで」とかそういう覚え方はしない。他のパートのこの音形が来たら「ええ感じで乗っかる」とかそういう覚え方をする。よって、逆に自分のパートだけで歌うのが苦手になったりする。
少なからず私にもそういう「手を抜く技術」が身についており、それが勝手に出てしまったというわけである。音さえ取れてしまったら、後は周りを聴いたほうが楽なのだ。
二回目。再びバイオリンだけで合わせてみる。
「お互い聞き合って」ということが全員に意識された為か、かなり縦が揃ってきて綺麗になり始めている。
今日のこれまでの演奏の中では今回が一番だったのではないだろうか。
橋田先生 「どうですか?ちゃんと聴けましたか?」
そう言って鋼のかっぱえびせんさんに振る橋田先生。
鋼 「ぷぃぷぃ虫さんしか聞こえませんでした」
― またか・・・
橋田先生 「やっぱりすごい存在感ですねぇ」
― デカくてすいません
一匹だけすごいゴツイ"ます"になってしまった。
全体的にピッチも安定してきて、リズム的にも揃い始めており、だんだん「音楽」になってきたので、つい入って行ってしまったのだ。
橋田先生 「5人ともが全パートを聞いてやるんだという気持が大切です」
さらに、
橋田先生 「リーダーのrauloopさんの弾き方、スタッカートをどう切っているかとか、そういう事も意識して歩み寄って行きましょう」
気がつけば『弾いて合わせるので精一杯』という状態から『音楽を作っていく』という段階に引き上げられている。
この後、何度かフルートとピアノを入れて全パートで弾き、すごく「上手くなった感」を持ってレッスンは終了となった。
そもそもついて行けるのかどうかと心配しながら参加したアンサンブルレッスンであるが、思っていたよりも何倍も充実感を持って終えることができたわけである。
里子アンサンブル(03)-歩み寄り-
まずは、Fさんと鋼のかっぱえびせんさんの二人が指名される。
― ふぅ・・・先じゃなくてよかったぜ
しかし、ほっと胸をなで下ろしたのもつかの間、前半部を弾き終えたところで橋田先生は弾いた二人にではなく、ぼんやり見物していた我々に向かってこう言った。
「じゃあ、感想を聞いてみましょうか」
まさか見物側に矛先が向くとは思っていなかった私は激しく動揺した。
まずはリーダーにということでrauloopさんに意見が求められる。
このとき私は「自分が何を述べるか」を必死で考えていたため、rauloopさんがどのような感想を述べたのかを全く覚えていない。
rauloopさんの意見を聞いたところで、今度は演奏した側の二人に向き直る橋田先生。
「"ます"というのは魚なんですね。それで、こう、ピューッと動くわけなんですが、それを表現するにはどうしたらいいと思いますか?」
なんという無茶ぶり。
つい先程初見で弾いたばかりなのだ。演奏したお二人には失礼だが、正直、今のところ「とりあえず最後まで弾き切る」というだけでも割りと精一杯くらいなのではなかろうか。その証拠にというか、案の定、『そんなこと言われましても顔』で二人は狼狽している。
しかし、容赦なく求められる意見。
Fさん 「え・・・っと・・・気持・・・とかそういうのですか?」
音楽としては別におかしなことは言っていないのだが、なんとなく場が和む。
橋田先生 「気持はすごく大事です。ですが、それだけでは伝わらないので、テクニック的にはどうしたらいいでしょう?」
追い込む橋田先生。
しかし、それ以上は意見が出てこないので今度は鋼のかっぱえびせんさんに意見が求められた。
鋼さん 「早く動かすとかですかね?」
そう言いながら、弓を早く動かす動作をする鋼のかっぱえびせんさん。
橋田先生 「それも一つですね」
今度は正解なのだろうか。
橋田先生 「でも、魚は早く動くといっても縦には動きませんよね?」
そう言いながら、上下に手を素早く動かす橋田先生。
最初私は「魚はむしろ縦にしか動かんだろう」とか思ったのだが、魚は鉛直方向には移動が出来ないということが言いたかったのだと手の動きを見て気付いた。
工学分野の出身である坂本先生であればこういう「空間関係を表現する」言葉がやたらと工学的・数学的に正しかったりするのだ。やはり女性的というか感覚的な表現をするんだなぁ・・・と妙なところで先生間での指導の違いを感じたりした。
橋田先生 「だからもっと横の動きが良いかもしれませんね」
そして、そのあたりを考えてもう一度弾いてみましょうとなった。
― おぉ!感想を言うコーナーがうやむやになった
橋田先生 「次はぷぃぷぃ虫さんにも感想を言ってもらいますからね」
逃げられはしないらしい。
そして、二人が弾き終わるときっちりと感想を求められる。
Kさん 「3連符はスラーの方が良いと思いました。」
さすがというか、バイオリンを弾いている人らしいちゃんとした意見である。私は人が弓を返すタイミングなど見ても無かった。
いよいよ私の番。
私 「え・・・と、萎縮してしまって弓が遅いというか、魚の速い感が出てなかったので、たっぷり弓使ったほうが良いかなぁ・・・と」
"緊張しぃ"の私が人に向かって「萎縮してしまって」などとよく言えたものである。
しかし、グループレッスンにおいて、この「意見を求められるかもしれない」という緊張感は良い。
人が弾いている間も決して気を抜いてはいられないのである。

選手交代。
rauloopさん、Kさん、私の3人で後半部。
後半部はバイオリンが3パートに別れているので、一人1パートである。
しかし、先程の二人の時とは異なり、すぐに合わせては見なかった。
橋田先生 「まずはこのラミソミだけを3人で合わせてみましょう」
前述した『基本パターン』でラミソミ音形を3人で合わせてみるというもの。
どうやら橋田先生のグループレッスンは「同じ練習パターン」を全員に繰り返すのではなく、「見てたからもうわかってるよね」の精神で後になるほど少しずつハードルが上がっていくシステムらしい。
まずはその『基本パターン』だけを3人で合わせてみた後、同じパターンを一人ひとり弾かされてその違いを比べられる。
橋田先生 「3人のを聞いてみてどうですか?」
聞いていたFさんが感想を求められる。
Fさん 「ぷぃぷぃ虫さんが・・・」
― ぇ?俺? なんかとちったかなぁ
rauloopさんもKさんも私の倍近いバイオリン歴なのである。私だけがおかしな弾き方をしているということは十分にありえる。
Fさん 「なんか迫力ありますよね」
― 来た・・・またこのパターンだ。
何故か分からないが、私は音楽をやっていると楽器や分野に関わらず必ずこのようなことを言われるのである。
音がデカイというか、音の存在感というかそういうモノが何故か強いらしい。もちろん合唱でも「声でかい」とか「お前しか聞こえない」などと日常的に言われる。声が大きいのは生まれつきだから仕方がないとしても、ピアノでも同じことを言われるのだ。私はピアノはバイエルを終わってちょっと行ったくらいなので、大して弾けない。いわゆる「個性」が出てくるレベルには程遠いのであるが、大学生の頃にピアノが置いてある部屋で私が一人で鍵盤を叩いていると、後で「さっきお前弾いてたよな?」とよく言われた。
それと同じことを今、バイオリンで言われているのである。
私 「あぁ・・・アレでしょ? "ます"、メッチャデカイみたいな・・・筋肉質なんでしょ?」
一同、筋肉質のデカイ"ます"を想像しただろうか、一気に笑いの空気になってしまった。
橋田先生 「坂本先生からは『期待の新人』と聞いていたんですが、それがよく解りますね」
何が解ったのだろうか。
『期待の新人』らしい音とは、どんな音なのだろう。
そして、今回がレッスン初回なのに全く周りと変わないレベルを要求されておかしいと思っていたが、あらかじめ坂本先生がガッツリとハードルを上げておいてくれたという訳である。
ここで橋田先生の解説。
「こうして、3人で弾いただけでもそれぞれに個性がありますよね。バイオリンは普段はソロ楽器ですからそれで良いのですが、こうして伴奏を弾くときはお互いの歩み寄りが必要ですね」
そして、『基本パターン』を3人全員が特定の誰かの弾き方に合わせて弾くという練習のやり方をとることになった。つまり、3人全員が私の弾き方で弾いたり、3人全員がrauloopさんの弾き方で弾いたりするというわけである。

橋田先生 「じゃあ、まずはぷぃぷぃ虫さんの弾き方で行きましょうか」
筋肉質な"ます"の群れ。
私の弾き方はラミソミ全てで弓を返している。そして、ラとミは開放弦。
もちろんレガートを意識しているが軽快な感じを出したいので流れよりリズム重視にし、最後は歯切れよく短めの音価にしている・・・と言えば聞こえが良いが、ぶっちゃけそれが一番簡単な弾き方だからである。
全員でその弾き方をする。
一番簡単な弾き方なので音もリズムも弾き方もかなり「パシッ」と合った。
上位の者が下位の者の弾き方に合わせるのは容易なのである。

橋田先生 「じゃあ、次はrauloopさんの弾き方で」
下位の者が上位の者に合わせるのは簡単ではない。
rauloopさんは先程全体的に柔らかい弾き方をしていた。私と真逆ですべての音をスラーでつないでいたように思う。流れ重視で主旋律を邪魔しない弾き方と言えるだろう。
一度弾いてみるが少しバラつく。
そして、バラついているのは多分私が原因だろう。
橋田先生 「Kさん。どういうところに気をつけて歩み寄ろうとしましたか?」
Kさん 「全部スラーなのと、あと、3rdポジションだったので・・・」
― なんと、ポジションが違ったのか。
橋田先生 「じゃあ、rauloopさんの弾き方でもう一度一人ずつ弾いてみましょう」
つまり、rauloopさんの弾き方がこの場合の理想型に最も近いから皆で練習しましょうということなのだろう。
まずは、お手本。rauloopさん。
Kさんの指摘の通り。3rdポジション・・・と言いたいところだが、私は3rdポジションを習っていない。「上の方」を使っている・・・と思った、というのが正確なところである。
― ほぅほぅ。コレが3rdポジションといふものかね
家で適当に遊び弾きをしているときに、「1ポジでは高音が足りないとき」に適当にやっていたのがどうやら3rdポジションというヤツらしい。勝手に習ってないところを使って遊んでいるなど、坂本先生にバレたら怒られるかも知れないが・・・。
そして、私の番。
― 3rdポジション習ってないんよなぁ・・・
運指がよくわからないので、一瞬考えてから弾いてみる。
しかし、左手だけに気が行ってボウイングが崩壊。
橋田先生 「もう一回」
今度は上手く行った。
初3rdポジション。
そして、全員がrauloopさんの弾き方で合わせてみる。
今度は全員が3rdポジションのため、弾き方とリズムはともかくピッチが完全には揃わないが、そこはご愛嬌。許容範囲ということで次に進む。

橋田先生 「じゃあ、Kさんの弾き方で行きましょう」
Kさんは3連符ラミソまでがスラーで一弓。そして、最後のミで弓を返すという弾き方。ポジションは1stポジションである。いわば私とrauloopさんの間に位置する弾き方。
前半スラーで最後だけ返しがあるため、流してアンサンブルで聞いてみると恐らく最後のミが「立って」良い感じで裏拍のリズムが効いてくるに違いない。
橋田先生からは、上記の弾き方に加えてさらに3連符の真ん中の音を大切に弾いているという指摘がなされた。
こちらも皆で弾き、一人ひとり弾くというスタイルで進行した。

最終的には「rauloopさんかKさんのような方向で歩み寄っていきましょう」という、柔らかく言いながらも結局は「ぷぃぷぃの弾き方は伴奏としてはうるさいよ」という結論を言い渡され、"ます"の伴奏バイオリンの方向性が決められた。
この後、ピアノ・フルートを含め全体で何度か弾き、バリエーションⅠは終了となった。
橋田先生 「よかったですよー」
確かに一番最初に比べればずいぶんとマシになったと思えるが、私自身は『移行パターン』では相変わらず落ちに落ち、終いには「そこをあきらめて」次の『基本パターン』で復活するのが上手くなった。
続く。
― ふぅ・・・先じゃなくてよかったぜ
しかし、ほっと胸をなで下ろしたのもつかの間、前半部を弾き終えたところで橋田先生は弾いた二人にではなく、ぼんやり見物していた我々に向かってこう言った。
「じゃあ、感想を聞いてみましょうか」
まさか見物側に矛先が向くとは思っていなかった私は激しく動揺した。
まずはリーダーにということでrauloopさんに意見が求められる。
このとき私は「自分が何を述べるか」を必死で考えていたため、rauloopさんがどのような感想を述べたのかを全く覚えていない。
rauloopさんの意見を聞いたところで、今度は演奏した側の二人に向き直る橋田先生。
「"ます"というのは魚なんですね。それで、こう、ピューッと動くわけなんですが、それを表現するにはどうしたらいいと思いますか?」
なんという無茶ぶり。
つい先程初見で弾いたばかりなのだ。演奏したお二人には失礼だが、正直、今のところ「とりあえず最後まで弾き切る」というだけでも割りと精一杯くらいなのではなかろうか。その証拠にというか、案の定、『そんなこと言われましても顔』で二人は狼狽している。
しかし、容赦なく求められる意見。
Fさん 「え・・・っと・・・気持・・・とかそういうのですか?」
音楽としては別におかしなことは言っていないのだが、なんとなく場が和む。
橋田先生 「気持はすごく大事です。ですが、それだけでは伝わらないので、テクニック的にはどうしたらいいでしょう?」
追い込む橋田先生。
しかし、それ以上は意見が出てこないので今度は鋼のかっぱえびせんさんに意見が求められた。
鋼さん 「早く動かすとかですかね?」
そう言いながら、弓を早く動かす動作をする鋼のかっぱえびせんさん。
橋田先生 「それも一つですね」
今度は正解なのだろうか。
橋田先生 「でも、魚は早く動くといっても縦には動きませんよね?」
そう言いながら、上下に手を素早く動かす橋田先生。
最初私は「魚はむしろ縦にしか動かんだろう」とか思ったのだが、魚は鉛直方向には移動が出来ないということが言いたかったのだと手の動きを見て気付いた。
工学分野の出身である坂本先生であればこういう「空間関係を表現する」言葉がやたらと工学的・数学的に正しかったりするのだ。やはり女性的というか感覚的な表現をするんだなぁ・・・と妙なところで先生間での指導の違いを感じたりした。
橋田先生 「だからもっと横の動きが良いかもしれませんね」
そして、そのあたりを考えてもう一度弾いてみましょうとなった。
― おぉ!感想を言うコーナーがうやむやになった
橋田先生 「次はぷぃぷぃ虫さんにも感想を言ってもらいますからね」
逃げられはしないらしい。
そして、二人が弾き終わるときっちりと感想を求められる。
Kさん 「3連符はスラーの方が良いと思いました。」
さすがというか、バイオリンを弾いている人らしいちゃんとした意見である。私は人が弓を返すタイミングなど見ても無かった。
いよいよ私の番。
私 「え・・・と、萎縮してしまって弓が遅いというか、魚の速い感が出てなかったので、たっぷり弓使ったほうが良いかなぁ・・・と」
"緊張しぃ"の私が人に向かって「萎縮してしまって」などとよく言えたものである。
しかし、グループレッスンにおいて、この「意見を求められるかもしれない」という緊張感は良い。
人が弾いている間も決して気を抜いてはいられないのである。




選手交代。
rauloopさん、Kさん、私の3人で後半部。
後半部はバイオリンが3パートに別れているので、一人1パートである。
しかし、先程の二人の時とは異なり、すぐに合わせては見なかった。
橋田先生 「まずはこのラミソミだけを3人で合わせてみましょう」
前述した『基本パターン』でラミソミ音形を3人で合わせてみるというもの。
どうやら橋田先生のグループレッスンは「同じ練習パターン」を全員に繰り返すのではなく、「見てたからもうわかってるよね」の精神で後になるほど少しずつハードルが上がっていくシステムらしい。
まずはその『基本パターン』だけを3人で合わせてみた後、同じパターンを一人ひとり弾かされてその違いを比べられる。
橋田先生 「3人のを聞いてみてどうですか?」
聞いていたFさんが感想を求められる。
Fさん 「ぷぃぷぃ虫さんが・・・」
― ぇ?俺? なんかとちったかなぁ
rauloopさんもKさんも私の倍近いバイオリン歴なのである。私だけがおかしな弾き方をしているということは十分にありえる。
Fさん 「なんか迫力ありますよね」
― 来た・・・またこのパターンだ。
何故か分からないが、私は音楽をやっていると楽器や分野に関わらず必ずこのようなことを言われるのである。
音がデカイというか、音の存在感というかそういうモノが何故か強いらしい。もちろん合唱でも「声でかい」とか「お前しか聞こえない」などと日常的に言われる。声が大きいのは生まれつきだから仕方がないとしても、ピアノでも同じことを言われるのだ。私はピアノはバイエルを終わってちょっと行ったくらいなので、大して弾けない。いわゆる「個性」が出てくるレベルには程遠いのであるが、大学生の頃にピアノが置いてある部屋で私が一人で鍵盤を叩いていると、後で「さっきお前弾いてたよな?」とよく言われた。
それと同じことを今、バイオリンで言われているのである。
私 「あぁ・・・アレでしょ? "ます"、メッチャデカイみたいな・・・筋肉質なんでしょ?」
一同、筋肉質のデカイ"ます"を想像しただろうか、一気に笑いの空気になってしまった。
橋田先生 「坂本先生からは『期待の新人』と聞いていたんですが、それがよく解りますね」
何が解ったのだろうか。
『期待の新人』らしい音とは、どんな音なのだろう。
そして、今回がレッスン初回なのに全く周りと変わないレベルを要求されておかしいと思っていたが、あらかじめ坂本先生がガッツリとハードルを上げておいてくれたという訳である。
ここで橋田先生の解説。
「こうして、3人で弾いただけでもそれぞれに個性がありますよね。バイオリンは普段はソロ楽器ですからそれで良いのですが、こうして伴奏を弾くときはお互いの歩み寄りが必要ですね」
そして、『基本パターン』を3人全員が特定の誰かの弾き方に合わせて弾くという練習のやり方をとることになった。つまり、3人全員が私の弾き方で弾いたり、3人全員がrauloopさんの弾き方で弾いたりするというわけである。




橋田先生 「じゃあ、まずはぷぃぷぃ虫さんの弾き方で行きましょうか」
筋肉質な"ます"の群れ。
私の弾き方はラミソミ全てで弓を返している。そして、ラとミは開放弦。
もちろんレガートを意識しているが軽快な感じを出したいので流れよりリズム重視にし、最後は歯切れよく短めの音価にしている・・・と言えば聞こえが良いが、ぶっちゃけそれが一番簡単な弾き方だからである。
全員でその弾き方をする。
一番簡単な弾き方なので音もリズムも弾き方もかなり「パシッ」と合った。
上位の者が下位の者の弾き方に合わせるのは容易なのである。




橋田先生 「じゃあ、次はrauloopさんの弾き方で」
下位の者が上位の者に合わせるのは簡単ではない。
rauloopさんは先程全体的に柔らかい弾き方をしていた。私と真逆ですべての音をスラーでつないでいたように思う。流れ重視で主旋律を邪魔しない弾き方と言えるだろう。
一度弾いてみるが少しバラつく。
そして、バラついているのは多分私が原因だろう。
橋田先生 「Kさん。どういうところに気をつけて歩み寄ろうとしましたか?」
Kさん 「全部スラーなのと、あと、3rdポジションだったので・・・」
― なんと、ポジションが違ったのか。
橋田先生 「じゃあ、rauloopさんの弾き方でもう一度一人ずつ弾いてみましょう」
つまり、rauloopさんの弾き方がこの場合の理想型に最も近いから皆で練習しましょうということなのだろう。
まずは、お手本。rauloopさん。
Kさんの指摘の通り。3rdポジション・・・と言いたいところだが、私は3rdポジションを習っていない。「上の方」を使っている・・・と思った、というのが正確なところである。
― ほぅほぅ。コレが3rdポジションといふものかね
家で適当に遊び弾きをしているときに、「1ポジでは高音が足りないとき」に適当にやっていたのがどうやら3rdポジションというヤツらしい。勝手に習ってないところを使って遊んでいるなど、坂本先生にバレたら怒られるかも知れないが・・・。
そして、私の番。
― 3rdポジション習ってないんよなぁ・・・
運指がよくわからないので、一瞬考えてから弾いてみる。
しかし、左手だけに気が行ってボウイングが崩壊。
橋田先生 「もう一回」
今度は上手く行った。
初3rdポジション。
そして、全員がrauloopさんの弾き方で合わせてみる。
今度は全員が3rdポジションのため、弾き方とリズムはともかくピッチが完全には揃わないが、そこはご愛嬌。許容範囲ということで次に進む。




橋田先生 「じゃあ、Kさんの弾き方で行きましょう」
Kさんは3連符ラミソまでがスラーで一弓。そして、最後のミで弓を返すという弾き方。ポジションは1stポジションである。いわば私とrauloopさんの間に位置する弾き方。
前半スラーで最後だけ返しがあるため、流してアンサンブルで聞いてみると恐らく最後のミが「立って」良い感じで裏拍のリズムが効いてくるに違いない。
橋田先生からは、上記の弾き方に加えてさらに3連符の真ん中の音を大切に弾いているという指摘がなされた。
こちらも皆で弾き、一人ひとり弾くというスタイルで進行した。




最終的には「rauloopさんかKさんのような方向で歩み寄っていきましょう」という、柔らかく言いながらも結局は「ぷぃぷぃの弾き方は伴奏としてはうるさいよ」という結論を言い渡され、"ます"の伴奏バイオリンの方向性が決められた。
この後、ピアノ・フルートを含め全体で何度か弾き、バリエーションⅠは終了となった。
橋田先生 「よかったですよー」
確かに一番最初に比べればずいぶんとマシになったと思えるが、私自身は『移行パターン』では相変わらず落ちに落ち、終いには「そこをあきらめて」次の『基本パターン』で復活するのが上手くなった。
続く。
里子アンサンブル(02)-褒めて育てるタイプ-
主楽譜(テーマ)は2回程度弾いたところで一度おいておき、バリエーションⅠに挑戦することになる。
バリエーションⅠの楽譜を少し説明しておこう。
テーマ楽譜の方は、いわゆる『縦が揃っている系』の楽譜で、1stバイオリンが主旋律を弾き、2nd~4thは『主旋と似たような譜割りで和音パート』という構成だった。
一方、バリエーションⅠは伴奏パートのバイオリンの動きがもっと細かくなっている。バイオリン伴奏パートは上下2パート。そして、基本的に次のようなパターンで同じ音形を上パートと下パートで掛け合うという造りになっている。

上パートが「ラレファ#レ」と来たら、下パートが同じ音形を繰り返すというもの。
もちろん、ずっと「ラレファ#レ」をだけを延々と繰り返して弾くわけではなく、和音進行に合わせて「ラレファ#レ」「ラミソミ」「ラド#ミド#」と音形は変わっていく。
「16分3連符+8分音符」というこのパターンを、ここでは『基本パターン』と呼ぶことにする。
口で言うと「タタタ タン」という感じになる。
メロディラインが進行している間は『基本パターン』のまま伴奏部も進行し、メロディの変わり目にだけちょっとした「あいの手」のようなパターンが入る。歌謡曲でいうところのAメロからBメロに行くための部分のような箇所、移行部では次のようなパターンになる。

「16分3連符+8分×3」というこのパターンを『移行パターン』とここでは呼ぶことにする。
こちらは口で言うと「タタタ ターラーラー」という感じである。
基本的に伴奏バイオリンがやる事はこの二つだけである。
「タタタ タン」を繰り返して、節目で「タタタ ターラーラー」。
さて、曲全体としては前半部と後半部で構成が若干異なる。
前半部ではフルートが主旋律を担当し、バイオリンは全員が上下どちらかの伴奏パートに配備される。そして、後半部ではバイオリン伴奏の上パートが二つに分離して、一方が主旋律パートとなり他方が伴奏の上として残る。バイオリン伴奏パートは前半でも後半でも『基本パターン』と『移行パターン』をこなすだけという点は変わらない。ただ、前半部の掛け合いは「上が先」で後半部は「下が先」と少しだけ変化がある。
後半部ではフルートはバイオリンによる伴奏と同じ旋律ラインに入ってくるのだが、上下バイオリンの動きを足してさらにトリルとかが入っていて楽譜が"黒い"。音符があり過ぎてよくわからないが「すごい譜面」とだけ言っておこう。
ピアノは配布された譜面に載っていなかったので詳しいことは判らないが、楽器構成上ピアノ以外は高音系の楽器ばかりだからか、聞いている限りでは低音部の支えが良く聞こえてきていた。後半部ではピアノにも主旋律音形が混じっていたような気がするが、色々音があり過ぎていて聞き切れないため実際どうだったかはわからない。
このまま行くと楽譜の説明だけで終わってしまいそうなので、ここらで話を戻そう。

さすがにバリエーションⅠはいきなり初見で・・・とはならず、5分ほど軽くそれぞれで練習してからということになった。そして、とりあえず、1回合せてみる。
しかし、それぞれが弾くので精一杯でかなりバラバラ・・・どころか、私などは『移行パターン』のたびに落下するというグダグダっぷり。
私の「弾けてない感」とは裏腹に、先生方はニコニコと満足げである。
橋田先生 「じゃあ、もう一回、今度はフルートを入れてやってみましょう」
― ギャー ムリムリ
主旋律であるフルートを工藤先生に担当してもらってもう一度合わせる。
そういえばフルートによるザッツ出しを初めて見る。
ごく自然にフルートを構えて、軽くフルートの先をくるっと柔らかに回すような感じのザッツ。もちろん動いているのはフルートや腕だけではない。体全体の動き、呼吸・・・完成された動きだと思った。テンポが判るだけでなく「こういう雰囲気で行きます」というのが入る前にすでに伝わっている。私もこういう感じでザッツを出したいものである。
― うはー・・・こりゃ絶対入れるザッツですなぁ・・・
しかし、入れたからと言って弾き続けられるとは限らないし、当然ザッツで感じた雰囲気通り弾ける腕もない。そして、in tempoはin tempoでもメロディラインには自然と微妙なテンポ揺れが発生する。よって「ちゃんと聞いていないと」揃わないのである。予想通り、主旋より早くなったり遅くなったりしてしまい、喰いついて行くので必死という状態になる。
しかし、やはり橋田先生は満足げである。
橋田先生 「じゃあ、今度はピアノを入れていってみましょうか」
なるほど。
笑顔でやさしいが、要求ハードルは上がっていくというわけである。
ピアノが入ると音数が一気に増えるため、かなり壮大な雰囲気になった。
最初はビビっていたが、ここまで来ると周りの一つ一つの音が分解された状態で自然に耳に入ってくるということはなくなり、和声として聞こえてくるようになるため、逆に惑わされたりすることが無くなってくる。さらに、ピアノが周りの高音系楽器に混じってしまいにくい低音のリズムパートを鳴らしてくれるため、バイオリンだけやフルートと合わせるだけよりもテンポ感がつかみやすく弾きやすい。
― なるほど・・・一気に行ってしまったほうがやりやすいのか
橋田先生 「なかなかイイじゃないですかー」
褒めてくれる橋田先生。
しかし、そろそろ解りはじめてきた。
橋田先生はおそらくは褒めて育てるタイプ。
そして、そういうタイプの場合、恐らくはその後にドーンとハードルが上がるに違いないのだ。
橋田先生 「じゃあ、分けて練習してみましょうか」
生徒一同 「ぇ?」
4パートに分かれていたテーマと異なり、バリエーションⅠでは伴奏パート二つだけであるため、各パートを二人か三人で弾いていた。それを、各パート一人ずつで弾いて「公開処刑しましょう」という訳である。
― やはりな・・・
続く。
バリエーションⅠの楽譜を少し説明しておこう。
テーマ楽譜の方は、いわゆる『縦が揃っている系』の楽譜で、1stバイオリンが主旋律を弾き、2nd~4thは『主旋と似たような譜割りで和音パート』という構成だった。
一方、バリエーションⅠは伴奏パートのバイオリンの動きがもっと細かくなっている。バイオリン伴奏パートは上下2パート。そして、基本的に次のようなパターンで同じ音形を上パートと下パートで掛け合うという造りになっている。

上パートが「ラレファ#レ」と来たら、下パートが同じ音形を繰り返すというもの。
もちろん、ずっと「ラレファ#レ」をだけを延々と繰り返して弾くわけではなく、和音進行に合わせて「ラレファ#レ」「ラミソミ」「ラド#ミド#」と音形は変わっていく。
「16分3連符+8分音符」というこのパターンを、ここでは『基本パターン』と呼ぶことにする。
口で言うと「タタタ タン」という感じになる。
メロディラインが進行している間は『基本パターン』のまま伴奏部も進行し、メロディの変わり目にだけちょっとした「あいの手」のようなパターンが入る。歌謡曲でいうところのAメロからBメロに行くための部分のような箇所、移行部では次のようなパターンになる。

「16分3連符+8分×3」というこのパターンを『移行パターン』とここでは呼ぶことにする。
こちらは口で言うと「タタタ ターラーラー」という感じである。
基本的に伴奏バイオリンがやる事はこの二つだけである。
「タタタ タン」を繰り返して、節目で「タタタ ターラーラー」。
さて、曲全体としては前半部と後半部で構成が若干異なる。
前半部ではフルートが主旋律を担当し、バイオリンは全員が上下どちらかの伴奏パートに配備される。そして、後半部ではバイオリン伴奏の上パートが二つに分離して、一方が主旋律パートとなり他方が伴奏の上として残る。バイオリン伴奏パートは前半でも後半でも『基本パターン』と『移行パターン』をこなすだけという点は変わらない。ただ、前半部の掛け合いは「上が先」で後半部は「下が先」と少しだけ変化がある。
後半部ではフルートはバイオリンによる伴奏と同じ旋律ラインに入ってくるのだが、上下バイオリンの動きを足してさらにトリルとかが入っていて楽譜が"黒い"。音符があり過ぎてよくわからないが「すごい譜面」とだけ言っておこう。
ピアノは配布された譜面に載っていなかったので詳しいことは判らないが、楽器構成上ピアノ以外は高音系の楽器ばかりだからか、聞いている限りでは低音部の支えが良く聞こえてきていた。後半部ではピアノにも主旋律音形が混じっていたような気がするが、色々音があり過ぎていて聞き切れないため実際どうだったかはわからない。
このまま行くと楽譜の説明だけで終わってしまいそうなので、ここらで話を戻そう。




さすがにバリエーションⅠはいきなり初見で・・・とはならず、5分ほど軽くそれぞれで練習してからということになった。そして、とりあえず、1回合せてみる。
しかし、それぞれが弾くので精一杯でかなりバラバラ・・・どころか、私などは『移行パターン』のたびに落下するというグダグダっぷり。
私の「弾けてない感」とは裏腹に、先生方はニコニコと満足げである。
橋田先生 「じゃあ、もう一回、今度はフルートを入れてやってみましょう」
― ギャー ムリムリ
主旋律であるフルートを工藤先生に担当してもらってもう一度合わせる。
そういえばフルートによるザッツ出しを初めて見る。
ごく自然にフルートを構えて、軽くフルートの先をくるっと柔らかに回すような感じのザッツ。もちろん動いているのはフルートや腕だけではない。体全体の動き、呼吸・・・完成された動きだと思った。テンポが判るだけでなく「こういう雰囲気で行きます」というのが入る前にすでに伝わっている。私もこういう感じでザッツを出したいものである。
― うはー・・・こりゃ絶対入れるザッツですなぁ・・・
しかし、入れたからと言って弾き続けられるとは限らないし、当然ザッツで感じた雰囲気通り弾ける腕もない。そして、in tempoはin tempoでもメロディラインには自然と微妙なテンポ揺れが発生する。よって「ちゃんと聞いていないと」揃わないのである。予想通り、主旋より早くなったり遅くなったりしてしまい、喰いついて行くので必死という状態になる。
しかし、やはり橋田先生は満足げである。
橋田先生 「じゃあ、今度はピアノを入れていってみましょうか」
なるほど。
笑顔でやさしいが、要求ハードルは上がっていくというわけである。
ピアノが入ると音数が一気に増えるため、かなり壮大な雰囲気になった。
最初はビビっていたが、ここまで来ると周りの一つ一つの音が分解された状態で自然に耳に入ってくるということはなくなり、和声として聞こえてくるようになるため、逆に惑わされたりすることが無くなってくる。さらに、ピアノが周りの高音系楽器に混じってしまいにくい低音のリズムパートを鳴らしてくれるため、バイオリンだけやフルートと合わせるだけよりもテンポ感がつかみやすく弾きやすい。
― なるほど・・・一気に行ってしまったほうがやりやすいのか
橋田先生 「なかなかイイじゃないですかー」
褒めてくれる橋田先生。
しかし、そろそろ解りはじめてきた。
橋田先生はおそらくは褒めて育てるタイプ。
そして、そういうタイプの場合、恐らくはその後にドーンとハードルが上がるに違いないのだ。
橋田先生 「じゃあ、分けて練習してみましょうか」
生徒一同 「ぇ?」
4パートに分かれていたテーマと異なり、バリエーションⅠでは伴奏パート二つだけであるため、各パートを二人か三人で弾いていた。それを、各パート一人ずつで弾いて「公開処刑しましょう」という訳である。
― やはりな・・・
続く。
里子アンサンブル(01)-不安-
2011年2月13日土曜日。
この日は初めてのアンサンブルレッスンだった。
そして里子レッスン、つまり、坂本先生以外の先生によるレッスンである。

レッスンはいつもの心斎橋教室ではなく、つい2~3日前にオープンしたばかりという本町の教室に向かう。
私は大阪に住んで長いが、都会の喧騒というやつが苦手であるため「街に遊びに行く」ということをしない。さらに職業がITエンジニアであり、基本的に内勤ばかりで外回りに行くということもほとんどない。よって、大阪市内の地理に全く明るくないのである。したがって「本町に来るように」という時点で既にかなりひるんでしまうのである。
地図を頼りに、指定された住所にたどり着くとそこには怪しげなビル。
一応断っておくが、別にそのビルだけが怪しいわけではなく、3~5階建てくらいの何が入っているかよく判らない都会の小ぶりなビルはすべて「怪しげ」に見えてしまうという田舎者気質なだけである。
教室がオープンしたての為か看板のようなものも無く、本当にここで良いのかと不安になる。
恐る恐る階段を上がっていくと、バイオリンの音がする。
どうやらここで間違いが無いようだ。
アンサンブルレッスンというが、私は誰が参加していて、どんなレッスンが展開されているのか全く知らない。前回の通常レッスン時に大量に楽譜を渡されただけである。かろうじてrauloopさんが参加しているということだけは知っているという程度にしか情報がなく、どれくらいのレベルが要求されるのかも知らないため、かなりビビっている。
ずいぶんと威勢よくバイオリンの音が聞こえると思ったら、レッスンルームの扉がドーンと開いていた。ビルの他の階にまで音が聞こえているが別に問題は無いのだろうか。
そして、恐る恐るレッスンルームに足を踏み入れる。
私 「こんにちわ~」
一同 「こんにちわ~」
その時点での参加メンバーは私以外に3名。
男性がrauloopさん、鋼のかっぱえびせんさんの2名。女性がFさんで1名。珍しく男性優位である。
ちなみに、Fさん含め3人とも以前に我が家で宴を催した際に遊びに来てくれた面々である。さらにその前にrauloopさん宅で宴が催された際にも全員が参加しており、その時に「酒:バヨ = 95:5」と豪語した女性こそがこのFさんである。
つまり、3人とも呑みに行ったりして気心の知れた仲なのである。
メンバーが見知った顔であることで、かなり私のビビり具合は軽減された。
レッスンルームの奥のほうを見ると、先生らしき女性が二人立っている。
メインの講師である橋田先生と、もう一人はフルートの先生であるという工藤先生。
共に美人。
ウチの嫁の言葉を借りれば「女子力が高い」ということになるだろうか。
― なるほど。可愛くて、癒される。理解した。
メンバーの中で本日が初参加であるのは、私だけということで先生方と軽く自己紹介などをする。
そうこうしているうちに、レッスン生の中では重鎮と呼ばれるKさんが到着しフルメンバーとなった。

先生から本日の楽譜が配られる。
橋田先生 「既に楽譜を配ってますが、もう少しちゃんと書いて来た物を配ります」
今日の題材は有名なシューベルトの『鱒(マス)』。その『マス』のピアノ五重奏曲をバイオリン・フルート・ピアノによるアンサンブル用に編曲した楽譜が配布された。
― よし!練習してきてない俺、勝ち組!
今配られた楽譜を初見で弾くのであれば、練習してきていなくても同じである。前日に通常のレッスンがあったこともあり、元々配られていたマスの楽譜では30分くらい軽く音をさらってきた程度なのである。
楽譜は主楽譜(テーマ)とバリエーションの2種類。それぞれバイオリンは4パートと3パートに分かれている。
橋田先生 「パートも決めてきました」
私はどちらのバリエーションでも2nd。
テーマ楽譜の方を見ると、出だしから二段目くらいまで音が二つしか無い上、その内の一つは開放弦のラ。
しかも他のパートは一人ずつ担当しているのに対して、私は鋼のかっぱえびせんさんとセットである。鋼のかっぱえびせんさんは私より1ヶ月程度先輩である。
― 初心者万歳!
見るからに初心者向けのパートに指名されてほくそ笑んでいると、
橋田先生 「じゃあ、さっそくやってみましょうか?」
― ぇ?もう? とりあえず個人練習とかは・・・?
初見でいきなり合わせである。
優しそうな風貌と雰囲気とは裏腹にレッスンそのものは厳しく行われるというわけだ。
そしてさっそく合わせてみる。
ちなみにテーマでのパート分けは、以下のとおり。
1st:我らがリーダーrauloopさん
2nd:鋼のかっぱえびせんさん、ぷぃぷぃ虫
3rd:裏のリーダーFさん
4th:重鎮Kさん
1stは分かりやすく主旋律。
4thがベース進行パートで、2ndと3rdは和音パートであるが、上手く和音を回転したりなんやらしているのか2ndだけが異様に簡単になっており、メンドクサイ感じの動きは全部3rdに行っている印象の楽譜。
橋田先生 「リーダーはrauloopさんですから、rauloopさんの入りで始めてください。」
2/2拍子での二拍目裏拍のアウフタクト。私なら「ギャー」となるところだ。
笑顔でやさしいようで、厳しいところは厳しいようである。
rauloopさんの指示でスタートする。
さすがはバイオリン門下生トップクラスと名高いrauloopさんのザッツ。全員が問題なくスタートする。
そして、初見にもかかわらず最後まで一応通る。
超初心者向けパートである2ndはともかく、他のパートが初見で通るというのはすごい。いったい他の人は普段どれくらい練習しているというのだろうか。
橋田先生 「イイ感じですね~。 ですよねー?」
と工藤先生にふる。
すると、工藤先生も、
工藤先生 「えぇ。最初からこれくらいとかスゴイです」
などと言っちゃっている。
いくら私が初心者とは言え、合唱で耳はそれなりに鍛えてある。
今の合わせが「そんなに言うほど上手くはない」という事は判る。
だが、悪い気はしない。それが人間というものである。
― なるほど。やさしくて、癒される。理解。
褒めてくれるタイプのレッスンというわけだ。
しかし、この後、実はジワジワ厳しいレッスンが待っているとは知る由もなかったのである。
続く。
この日は初めてのアンサンブルレッスンだった。
そして里子レッスン、つまり、坂本先生以外の先生によるレッスンである。




レッスンはいつもの心斎橋教室ではなく、つい2~3日前にオープンしたばかりという本町の教室に向かう。
私は大阪に住んで長いが、都会の喧騒というやつが苦手であるため「街に遊びに行く」ということをしない。さらに職業がITエンジニアであり、基本的に内勤ばかりで外回りに行くということもほとんどない。よって、大阪市内の地理に全く明るくないのである。したがって「本町に来るように」という時点で既にかなりひるんでしまうのである。
地図を頼りに、指定された住所にたどり着くとそこには怪しげなビル。
一応断っておくが、別にそのビルだけが怪しいわけではなく、3~5階建てくらいの何が入っているかよく判らない都会の小ぶりなビルはすべて「怪しげ」に見えてしまうという田舎者気質なだけである。
教室がオープンしたての為か看板のようなものも無く、本当にここで良いのかと不安になる。
恐る恐る階段を上がっていくと、バイオリンの音がする。
どうやらここで間違いが無いようだ。
アンサンブルレッスンというが、私は誰が参加していて、どんなレッスンが展開されているのか全く知らない。前回の通常レッスン時に大量に楽譜を渡されただけである。かろうじてrauloopさんが参加しているということだけは知っているという程度にしか情報がなく、どれくらいのレベルが要求されるのかも知らないため、かなりビビっている。
ずいぶんと威勢よくバイオリンの音が聞こえると思ったら、レッスンルームの扉がドーンと開いていた。ビルの他の階にまで音が聞こえているが別に問題は無いのだろうか。
そして、恐る恐るレッスンルームに足を踏み入れる。
私 「こんにちわ~」
一同 「こんにちわ~」
その時点での参加メンバーは私以外に3名。
男性がrauloopさん、鋼のかっぱえびせんさんの2名。女性がFさんで1名。珍しく男性優位である。
ちなみに、Fさん含め3人とも以前に我が家で宴を催した際に遊びに来てくれた面々である。さらにその前にrauloopさん宅で宴が催された際にも全員が参加しており、その時に「酒:バヨ = 95:5」と豪語した女性こそがこのFさんである。
つまり、3人とも呑みに行ったりして気心の知れた仲なのである。
メンバーが見知った顔であることで、かなり私のビビり具合は軽減された。
レッスンルームの奥のほうを見ると、先生らしき女性が二人立っている。
メインの講師である橋田先生と、もう一人はフルートの先生であるという工藤先生。
共に美人。
ウチの嫁の言葉を借りれば「女子力が高い」ということになるだろうか。
― なるほど。可愛くて、癒される。理解した。
メンバーの中で本日が初参加であるのは、私だけということで先生方と軽く自己紹介などをする。
そうこうしているうちに、レッスン生の中では重鎮と呼ばれるKさんが到着しフルメンバーとなった。




先生から本日の楽譜が配られる。
橋田先生 「既に楽譜を配ってますが、もう少しちゃんと書いて来た物を配ります」
今日の題材は有名なシューベルトの『鱒(マス)』。その『マス』のピアノ五重奏曲をバイオリン・フルート・ピアノによるアンサンブル用に編曲した楽譜が配布された。
― よし!練習してきてない俺、勝ち組!
今配られた楽譜を初見で弾くのであれば、練習してきていなくても同じである。前日に通常のレッスンがあったこともあり、元々配られていたマスの楽譜では30分くらい軽く音をさらってきた程度なのである。
楽譜は主楽譜(テーマ)とバリエーションの2種類。それぞれバイオリンは4パートと3パートに分かれている。
橋田先生 「パートも決めてきました」
私はどちらのバリエーションでも2nd。
テーマ楽譜の方を見ると、出だしから二段目くらいまで音が二つしか無い上、その内の一つは開放弦のラ。
しかも他のパートは一人ずつ担当しているのに対して、私は鋼のかっぱえびせんさんとセットである。鋼のかっぱえびせんさんは私より1ヶ月程度先輩である。
― 初心者万歳!
見るからに初心者向けのパートに指名されてほくそ笑んでいると、
橋田先生 「じゃあ、さっそくやってみましょうか?」
― ぇ?もう? とりあえず個人練習とかは・・・?
初見でいきなり合わせである。
優しそうな風貌と雰囲気とは裏腹にレッスンそのものは厳しく行われるというわけだ。
そしてさっそく合わせてみる。
ちなみにテーマでのパート分けは、以下のとおり。
1st:我らがリーダーrauloopさん
2nd:鋼のかっぱえびせんさん、ぷぃぷぃ虫
3rd:裏のリーダーFさん
4th:重鎮Kさん
1stは分かりやすく主旋律。
4thがベース進行パートで、2ndと3rdは和音パートであるが、上手く和音を回転したりなんやらしているのか2ndだけが異様に簡単になっており、メンドクサイ感じの動きは全部3rdに行っている印象の楽譜。
橋田先生 「リーダーはrauloopさんですから、rauloopさんの入りで始めてください。」
2/2拍子での二拍目裏拍のアウフタクト。私なら「ギャー」となるところだ。
笑顔でやさしいようで、厳しいところは厳しいようである。
rauloopさんの指示でスタートする。
さすがはバイオリン門下生トップクラスと名高いrauloopさんのザッツ。全員が問題なくスタートする。
そして、初見にもかかわらず最後まで一応通る。
超初心者向けパートである2ndはともかく、他のパートが初見で通るというのはすごい。いったい他の人は普段どれくらい練習しているというのだろうか。
橋田先生 「イイ感じですね~。 ですよねー?」
と工藤先生にふる。
すると、工藤先生も、
工藤先生 「えぇ。最初からこれくらいとかスゴイです」
などと言っちゃっている。
いくら私が初心者とは言え、合唱で耳はそれなりに鍛えてある。
今の合わせが「そんなに言うほど上手くはない」という事は判る。
だが、悪い気はしない。それが人間というものである。
― なるほど。やさしくて、癒される。理解。
褒めてくれるタイプのレッスンというわけだ。
しかし、この後、実はジワジワ厳しいレッスンが待っているとは知る由もなかったのである。
続く。
里子アンサンブル(序)
突然だが、私の通っている教室を紹介しておきたいと思う。
なぜ今になって教室について語るかというと、今後の展開上、どういう教室であるかを知っておいてもらった方がスムーズに情景を理解できると思ったからである。むしろ、知らないと何を言っているのか解らなくなる事もあるのではないかと思う。
私は大阪の『凛ミュージック』という音楽教室にお世話になっている。
『凛ミュージック』は、このブログも含めて音楽系ブログの広告スペースによく名前が登場しているので、なんとなく目にしたことがある方も多いかも知れない。元々はピアノ教室としてスタートした教室で、現在ではピアノはもちろん、バイオリン・ビオラ・フルート・クラリネット・ギター・ドラム・歌などなど・・・幅広く展開している。
何故かモノポリー大会や カクテル教室や ヨガ教室 をやっていたり、あろうことか教室の「中で」Bar を開いたりしており、もはや何を目指している教室なのかと疑問に思う事は多々あるが、楽しいので良しとしておこう。
ちなみに私はバイオリンしかやっていないが、希望すれば他の楽器を受講することも可能である。嫁は坂本先生からピアノとリコーダーを習っているが、リコーダー課など無かったところに強引にお願いして教えてもらっている。よって、色々な面でかなり融通が利く教室であると言える。
基本的に「大人が通いやすい」という事にかなり配慮してくれている教室で、レッスン日程は固定ではなく予約制。さらに予約可能な時間の幅が広く、最大で25時までレッスンを受けることができたりする。
入ってみてから思ったことであるが、この「大人が通いやすい」という所はかなり徹底されている。すなわち、「サービス」というものに対して目が肥えた大人が見て遜色が無いレベルにサービスレベルが設定されている。師から弟子に音楽を教えるという一方的な関係だけではなく、その前に大人としての人間同士の付き合いというものがあるという点に配慮がなされているように思えるのである。
それは、個人情報の取り扱いに対する姿勢や、運営側が生徒からの意見を聞く姿勢などに表れている。また、生徒に対して融通を利かせているのとは裏腹に、先生に対する運営側の規則というか規律というか縛りのようなものは相当に厳しいらしく、いわゆる音楽業界の師弟間で慣習的に行われている不透明かつ不合理な物事は全面的に禁止されている模様である。そんな風に随所で「ちゃんとしている」教室という側面も持っているのである。
さて、そんな入ってみないとわからない様なことは当然後になってから知ったことであり、通いやすさとBarに惹かれて凛ミュージックに通う事を決めたのは、このブログの開設当初のお話でご紹介した通りである。「きっと私の肌に合うだろう」と思っていたその当時の予想と期待は微塵たりとも裏切られることはなく、むしろ期待を超えていく勢いでピッタリ来ている。
ただ、かなりユニークな教室であることは間違いなく、探偵ナイトスクープに教室が出たりしており、生徒もかなり個性派がそろっている。

さて、ここからが今回のお話なのだが、ここまでで皆様に何を解って欲しかったかというと
『教室には坂本先生以外にも先生がよーさんおる』
ということである。
様々な楽器を教えているということもあり、教室では他の楽器も交えたアンサンブルレッスンなるものが開講されており、坂本先生をはじめ色々な先生方がそれぞれにレッスンを受け持っているらしい。
そしてある日のレッスンで、
坂本先生 「橋田レッスンどうですか?」
と言われて、流れで
私 「参加します」
と言ってしまったのが事の発端である。
『橋田レッスン』とは、「橋田先生」による「アンサンブルレッスン」である。
橋田先生とはピアノ課の女性の先生で、そのアンサンブルレッスンはバイオリン課の生徒から、
「かわいい」 「やさしい」 「癒される」
と大評判のレッスンなのである。
全然関係ないが、我らが坂本先生のアンサンブルレッスンは、
「怖い」 「厳しい」 「怒られる」
という噂を聞いている。
私はまだ参加したことが無いのでよくわからないが、風の噂で私の参加がそろそろ義務づけられるという話を聞いており戦々恐々としている。
さて、そんな橋田レッスンを受けてみた・・・というのが今回のお話である。
続く。
なぜ今になって教室について語るかというと、今後の展開上、どういう教室であるかを知っておいてもらった方がスムーズに情景を理解できると思ったからである。むしろ、知らないと何を言っているのか解らなくなる事もあるのではないかと思う。
私は大阪の『凛ミュージック』という音楽教室にお世話になっている。
『凛ミュージック』は、このブログも含めて音楽系ブログの広告スペースによく名前が登場しているので、なんとなく目にしたことがある方も多いかも知れない。元々はピアノ教室としてスタートした教室で、現在ではピアノはもちろん、バイオリン・ビオラ・フルート・クラリネット・ギター・ドラム・歌などなど・・・幅広く展開している。
何故かモノポリー大会や カクテル教室や ヨガ教室 をやっていたり、あろうことか教室の「中で」Bar を開いたりしており、もはや何を目指している教室なのかと疑問に思う事は多々あるが、楽しいので良しとしておこう。
ちなみに私はバイオリンしかやっていないが、希望すれば他の楽器を受講することも可能である。嫁は坂本先生からピアノとリコーダーを習っているが、リコーダー課など無かったところに強引にお願いして教えてもらっている。よって、色々な面でかなり融通が利く教室であると言える。
基本的に「大人が通いやすい」という事にかなり配慮してくれている教室で、レッスン日程は固定ではなく予約制。さらに予約可能な時間の幅が広く、最大で25時までレッスンを受けることができたりする。
入ってみてから思ったことであるが、この「大人が通いやすい」という所はかなり徹底されている。すなわち、「サービス」というものに対して目が肥えた大人が見て遜色が無いレベルにサービスレベルが設定されている。師から弟子に音楽を教えるという一方的な関係だけではなく、その前に大人としての人間同士の付き合いというものがあるという点に配慮がなされているように思えるのである。
それは、個人情報の取り扱いに対する姿勢や、運営側が生徒からの意見を聞く姿勢などに表れている。また、生徒に対して融通を利かせているのとは裏腹に、先生に対する運営側の規則というか規律というか縛りのようなものは相当に厳しいらしく、いわゆる音楽業界の師弟間で慣習的に行われている不透明かつ不合理な物事は全面的に禁止されている模様である。そんな風に随所で「ちゃんとしている」教室という側面も持っているのである。
さて、そんな入ってみないとわからない様なことは当然後になってから知ったことであり、通いやすさとBarに惹かれて凛ミュージックに通う事を決めたのは、このブログの開設当初のお話でご紹介した通りである。「きっと私の肌に合うだろう」と思っていたその当時の予想と期待は微塵たりとも裏切られることはなく、むしろ期待を超えていく勢いでピッタリ来ている。
ただ、かなりユニークな教室であることは間違いなく、探偵ナイトスクープに教室が出たりしており、生徒もかなり個性派がそろっている。




さて、ここからが今回のお話なのだが、ここまでで皆様に何を解って欲しかったかというと
『教室には坂本先生以外にも先生がよーさんおる』
ということである。
様々な楽器を教えているということもあり、教室では他の楽器も交えたアンサンブルレッスンなるものが開講されており、坂本先生をはじめ色々な先生方がそれぞれにレッスンを受け持っているらしい。
そしてある日のレッスンで、
坂本先生 「橋田レッスンどうですか?」
と言われて、流れで
私 「参加します」
と言ってしまったのが事の発端である。
『橋田レッスン』とは、「橋田先生」による「アンサンブルレッスン」である。
橋田先生とはピアノ課の女性の先生で、そのアンサンブルレッスンはバイオリン課の生徒から、
「かわいい」 「やさしい」 「癒される」
と大評判のレッスンなのである。
全然関係ないが、我らが坂本先生のアンサンブルレッスンは、
「怖い」 「厳しい」 「怒られる」
という噂を聞いている。
私はまだ参加したことが無いのでよくわからないが、風の噂で私の参加がそろそろ義務づけられるという話を聞いており戦々恐々としている。
さて、そんな橋田レッスンを受けてみた・・・というのが今回のお話である。
続く。